巨人キャンプ第3クール初日(11日)、長嶋茂雄終身名誉監督(77)が宮崎を訪れ、原辰徳監督(55)と愛弟子で臨時打撃コーチを務める松井秀喜氏(39)と対面した。国民栄誉賞を受賞した昨年5月5日以来となる豪華スリーショットが実現し、ゴジラフィーバーは最高潮。予想を超える盛り上がりに、球団内では松井氏の「入閣待望論」が日に日に高まっている。

 午前9時半すぎ、歓声を浴びながら長嶋終身名誉監督がサンマリンスタジアムに到着した。ミスターは原監督のエスコートでグラウンド中央の円陣に歩を進めると、愛弟子の松井臨時コーチとがっちり握手。ナインに訓示を求められると「勝つ、勝つ、勝つぞー!」と叫び、左手を勢いよく突き上げた。

 1994年10月8日、リーグ優勝をかけた中日との公式戦最終戦前のミーティングで生まれた伝説のセリフを、時を超えて再び放ったミスター。それほどこの日を楽しみにしていたのだろう。2泊3日の滞在予定は病に倒れてから最長だ。朗らかな笑顔から、愛弟子と宮崎で再会できる喜びが伝わってきた。

 師弟は正午から紅白戦をブースで観戦。試合後は恒例となった“松井打撃投手”が、亀井を相手に特打ちのマウンドに上がる。するとミスターも原監督とベンチ前に姿を現した。97球を投げ終えた松井氏が加わって豪華スリーショットが実現すると、スタンドから悲鳴のような声援が飛んだ。

「元気だね、体が強いね。毎日150球投げている。強い、強い」と愛弟子の働きぶりに大満足だったミスター。一方の松井コーチも珍しく感傷的になって「懐かしい思い出がよみがえりました」。

 巨人のレジェンドが並んだこの日、宮崎県総合運動公園には、球団単独のキャンプとしては史上最多の4万2000人が訪れた。

 宮崎ではゴジラフィーバーが、ソチ五輪そっちのけの盛り上がりを見せている。人が押し寄せる球場正面の観客フェンスはすでに2枚も破損。警備員は「こんなことは長嶋さんが監督、松井さんが選手だった時代以来です」と話す。球団も松井氏の人気のすごさに改めて驚かされる毎日だ。

 だからこそ、戻ってきてもらいたい思いも強くなる。松井氏に対しては、白石オーナーが年明けに「ゆくゆくは監督として率いてくれることを切望している。その気持ちに変化はない」と語るなど、指導者入りの希望を隠そうとしていない。一方で松井氏は態度をいまだ明らかにしていない。

 それだけに球団としては、師弟が顔を合わせ、思い出の地で共に感傷に浸っているこの瞬間は絶好の機会と見ている。2人の気持ちが盛り上がっている今なら、ミスターのひと言をきっかけに、松井氏が巨人復帰を決断してくれるのではないかと期待しているのだ。

 長嶋終身名誉監督はこの日、愛弟子の巨人復帰への期待を聞かれて「そういう方向に行くようにね」と笑顔で返した。宮崎の懐かしい空気に触れて心がぐらついているところに、恩師から直接ラブコールを送られれば――。松井氏が再び巨人のユニホームをまとう日も近づくかもしれない。