阪神がライバル打線を幻惑する秘策を練っている。この作戦の中心はベテラン捕手トリオだ。DeNAにFA移籍した久保の人的補償として獲得した鶴岡一成(36)、藤井彰人(37)、日高剛(36)。35歳以上の捕手が3人という異例の態勢には他球団からも「どう使うの?」と疑問の声が噴出しているが、虎首脳陣はしっかりとフル活用するプランを編み出していた。

 正捕手争いについて和田監督は「中心となる捕手が抜け出してくれることを期待している」という。ベテラン3人に加え、昨年は28試合に先発出場した清水誉(29)や小宮山慎二(28)なども虎視眈々と正妻の座を狙っている。

 守備の要となる重要なポジションだけに柱となる人材が出てきてほしいところ。しかし、あるコーチが「1人に決めるのが理想だが、少なくともシーズン序盤は何人かの捕手を試しつつやっていくのが現実的だろう」と説明するように、現状では決め手がない混戦模様だ。

 そこで発想の転換だ。正妻がいないなら無理して決める必要はない――。首脳陣が温めている策の一つは「1カードの3連戦ですべて違う捕手を先発させるというのもあるだろう。傾向が変わって相手がやりにくくなる」というものだ。

 藤井、鶴岡、日高のリードは三者三様だ。藤井は投手の意思を尊重し、最大限に生かすタイプ。日高は打者に合わせた傾向が強く、左投手とのコンビには定評がある。そして、鶴岡は投手を鼓舞しながら持ち味を引き出すスタイルだ。毎日、違う捕手が出てくれば配球の傾向も変化するため相手打線を困惑させることができる。

 さらに「打者一回りとか、3イニングずつとかで捕手をリレーする。打者は嫌だろう」(あるコーチ)という継投ならぬ“継捕策”も視野に入れている。捕手が小刻みに代わることで投手が戸惑ってしまうことも懸念されるが、主力投手は「投げる方としては問題ない。事前に意思を確認しておけば対応できる」と話しており、異論はない。

 春季キャンプでのベテラン3人組の状態や若手捕手の成長などを見極めた上で慎重に戦略を固めていく。