昨季60本塁打でプロ野球のシーズン本塁打記録を更新したヤクルトの外野手、ウラディミール・バレンティン容疑者(29)が、カーラ夫人(32)への監禁・暴行容疑で逮捕された事件が波紋を広げている。ヤクルト球団が事実確認などの対応に追われる一方、CM放送は放映中止が即日決定。関連企業は大打撃を予感し頭を抱えた。そして離婚協議中の慰謝料はどうなるのか。今季プレーはできるのか…。昨年、一躍日本球界のスーパースターにのし上がった男が一瞬にしてドン底へ落ちた騒動を追った。

 衝撃的な「バレンティン逮捕」の一報から一夜明けた15日、バレンティン容疑者の顧問弁護士は「バレンティンは『春季キャンプまでに妻と一緒に日本に戻りたい』と話している」とコメント。容疑については「誤解があっただけ」と否認していることを明かした。一方、カーラ夫人はテレビ朝日の取材に「それまで暴力を振るわれたことがなかったので非常に驚いた」と夫とは食い違う説明をしている。

 逮捕の事実が伝えられた14日、ヤクルトの球団事務所は朝から対応に追われた。午前と午後に分けて会見を開いた衣笠球団社長は、バレンティン容疑者の顧問弁護士が本人と接触したという報告があったと明かした上で「最初は外で話していたが、人の目もあるので中で話をしようと言った。奥様は外で話したかったのか、強引に手を引っ張って行き、そのときの行為が今回の件につながったのではないか」と説明した。球団側は今後の処分等に関しては「詳細が分かってから。仮の話はできない」(衣笠社長)とした。

 一方、キリンビールはバレンティン容疑者が出演している発泡酒「澄みきり」のCMを14日から打ち切り、代わりに別の商品のCMを差し替えて放映。キリンビール広報部は「当社としても驚きました」と困惑しきりで、違約金に関しては「詳細が分かってから」と有無を明らかにしなかったが、犯罪に絡んでの打ち切りだけに「当然、発生するでしょう」(広告代理店関係者)との見方が強い。

 一般的に違約金の金額は「問題は商品のイメージダウン。実際に犯罪に関わったりした場合には契約金をそのまま返還するか、それ以上に多額の賠償金を科す場合もある」(同広告代理店関係者)。今回のCM出演料は推定3000万円前後で、賠償金を含めたら、最高で1億円を超す可能性もある。

 一方、バレンティン容疑者行きつけの神宮球場近くのアメリカンダイナー「E・A・T」では、60本塁打達成を記念して「バレンティンバーガー」(1150円)を売り出していたが、これも「今回のことで(販売が)取りやめになるかもしれない」(店舗関係者)と波紋は広がっている。年末の特番などでも取り上げられ「じわじわと人気が出始めていたところだったのに、残念です」と関係者は肩を落とした。

 そして、今後のバレンティン容疑者はどうなるのか。「それほど重大なことにはならないでしょう。日本でのプレーに差し支えはないと思います」と話すのは日大名誉教授(刑法)の板倉宏氏。同名誉教授によると「日本では驚かれるかもしれませんが、米国ではよくある事件です。米国は大げさで、ちょっと殴られただけで『ワイフビーティング』といって捕まえちゃう。殴られてなくても『殴られた』と言えば捕まえてしまう。それだけDVに厳しいわけですが、それで起訴までいくケースはほとんどない。彼も起訴されることはないでしょう」という。

 ただ「米国は賠償金が高いですからね。離婚協議中ということもあり、今回の一件で慰謝料は間違いなく高くなるでしょう。彼の給料(推定年俸2億1000万円)を考えれば3億円ぐらいになるでしょうか。2億ぐらいで済んでいたところ、もう1億余計に払うことになるのでは」と同名誉教授。「暴行」とはいえないほどの行為だったかもしれないが…。その代償はあまりにも大きかった。