阪神のドラフト1位・岩貞祐太投手(22=横浜商大)が3日、熊本市の母校・必由館高グラウンドで自主トレを公開した。1年目から先発ローテーション入りを期待されている即戦力左腕だが、球団フロントは一日も早く頭角を現してほしいと祈っている。その背景には虎党の「2大不満」がある。

 ランニングやキャッチボール、高校時代の練習メニューだったしめ縄での縄跳びなどで汗を流した岩貞は「しんどかった時を思い出した。妥協はなくして特に気合を入れていきたい」と決意を新たにした。すでに和田監督ら首脳陣も駒不足の先発陣を補う候補の一人として期待しており、2月の春季キャンプも一軍の沖縄・宜野座組に参加させることを内定している。

 そんな岩貞の動向を例年の新人以上に注視しているのが球団フロントだ。理由は“世論”。ある球団関係者は「昨年10月のドラフト会議後も“なぜ大阪桐蔭の森(友哉)を1位でいかなかった”という声が依然として多い」と打ち明ける。

 若手捕手の伸び悩み、藤浪とバッテリーを組んでいた実績などから“森人気”は高かったが、球団では即戦力投手が必要と判断。投手の指名を最優先し、最終的に岩貞を1位で獲得した。一方、森は1位で単独指名した西武に入団した。このドラフト会議終了後も“森待望論”は根強く、球団関係者は「森を回避したドラフト方針を批判するような声が大きくなる」と心配しているのだ。

 さらに、このオフには新守護神として韓国最強ストッパーの呉昇桓(オ・スンファン、前サムスン)を獲得。外国人選手枠の関係で先発ローテーションの一角だったスタンリッジとの契約を打ち切った。この補強策についても「先発が足りないのに計算できるスタンリッジを切って大丈夫か」「呉昇桓にそこまでの実力があるのか」などの反対意見が噴出。「森回避」と「スタンリッジ放出」は虎党の2大不満となっている。

 もちろんフロントでは岩貞も呉昇桓も戦力になることを確信している。しかし、もし岩貞や呉昇桓の獲得が裏目に出てしまうようならフロントへの風当たりが強くなるのは確実。このため「活躍すれば、そういう声もなくなる」と球団関係者のエールにも力が入る。

 思わぬ“期待”がかけられてしまったルーキー左腕。救世主となれるか。