広島V奪回への秘策:総合編

【大下剛史氏 熱血球論】2回にわたってカープが23年ぶりのリーグ優勝を目指す上での課題や問題点を取り上げてきたが、克服すべきことはそう多いわけではない。投手編で挙げた「大竹の抜けた穴」、野手編で指摘した「栗原の扱い」、そして石原、倉に続く「若手捕手の育成」、あとは「右打ちの外野手のレギュラー固定」ぐらいだ。

 捕手の育成は時間のかかることだし、ベテラン2人が元気ならそう慌てる必要はない。それに対して、外野の布陣をどうするかは頭の痛いところだろう。高い次元で走・攻・守のバランスが取れているのは丸ぐらいで、残留が決まったエルドレッドや松山は守備と走塁に難がある。逆に守備と走塁のスペシャリスト・赤松は打が物足りない。今年4月に15打席連続出塁の日本新記録を樹立した広瀬にいたっては、結果を残してもレギュラーとして定着させてもらえなかった。

 キャンプ、オープン戦を経て最終的に野村監督がどんな決断を下すか分からないが、選手の調子や相手投手の左右でコロコロ代えるような起用法はあまり褒められたものじゃない。打順やポジションを固定することが、選手にとってどれだけ働きやすいかは、今季日本一に輝いた楽天の戦いぶりが証明している。

 早いもので野村政権は5年目を迎える。求められる結果は優勝のみ。選手層を考えれば、十分に狙える戦力は整っている。あと必要なのは指揮官自身が変わることだ。何もかも自分でやろうとせず、コーチ陣に任せるところは任せる。最近で言うなら、監督時代の中日・落合GMがそうだった。自ら手取り足取り教えるのではなく、バックネット裏やベンチなど、ちょっと引いた場所から選手たちを俯瞰(ふかん)する。そうすることで、かえって選手の体調や張り切り具合が分かったりするものだ。

 サラリーマン社会も同じだろうが、部下は上司の言動を注視している。選手に「今年の監督はこれまでと違うぞ」と思わせたらしめたもの。指揮官が任せてくれていると実感できれば、選手もコーチも結果で応えてくれる。キャンプから実践できれば、きっと秋に大輪の花を咲かせられるはずだ。

(本紙専属評論家)