広島V奪回への秘策:野手編

【大下剛史氏 熱血球論】ここ数年でカープの野手陣は着実に力をつけてきた。中でも象徴的なのが、今季ブレークした丸と菊池だ。ともにベストナインでは次点に泣いたが、ゴールデングラブ賞に選ばれ、丸は盗塁王を獲得して念願のタイトルホルダーとなった。

 そうは言っても2人は今季が実質1年目。来季はライバルに研究されるし、いわゆる“2年目のジンクス”に悩まされることもあるだろう。ただ、この2人はカープの黄金時代をけん引してきた歴代の1、2番コンビに匹敵する力を持っている。苦しみながらも来季を乗り越えることができれば、カープの将来を背負って立つことになるだろう。

 むしろ心配なのは、悩んだ末に残留という結論を出した栗原の扱いだ。この2年は故障続きだったこともあり、一軍出場は2年連続で20試合そこそこ。今季は故障が癒えても帰る場所がなかった。シーズン途中から一塁に定着したキラは残留が決まり、三塁には捲土重来を期す堂林がいる。栗原の厳しい立場は変わらない。

 首脳陣は「三塁でもどこでもレギュラーを奪ってやる」という気概を見せてほしいと期待しているのに、肝心の本人にそこまでの覚悟が感じられない。性格的に代打や控えで気持ちよくプレーできるタイプではないし、もともと好不調の波が激しい。今季のような扱いを受ければ、チームの雰囲気を悪くする火薬庫となる危険性をはらんでいる。

 ただ、使う側がうまくコントロールして爆発してくれれば、これほど心強いことはない。まだ31歳と老け込む年齢ではないし、プロ入りしたころのような純粋な気持ちでプレーできれば、きっと復活できる。実績のある栗原をどうやる気にさせ、戦力としてチームに貢献させるか。首脳陣の腕の見せどころでもある。

(本紙専属評論家)