“熱湯甲子園”安楽155キロ生んだ猛暑耐久トレ

2013年08月16日 11時00分

帽子を飛ばして力投の安楽

 第95回全国高校野球選手権大会、第7日(14日)に今春センバツ準V・済美(愛媛)の剛腕・安楽智大(2年)が登場した。三重(三重)に苦戦を強いられながらも9―7で逃げ切り勝利。甲子園大会最速タイの155キロをマークするなどパワーアップした姿も見せつけた。そんな怪物右腕は灼熱の甲子園マウンドに備えて、壮絶な“猛暑耐久トレ”を敢行していた。その熱すぎる中身とは…。

 初回を二ゴロで終えた安楽の速球は155キロを計測した。スピードガンが普及した1980年以降では仙台育英(宮城)・佐藤由規(現ヤクルト)に並ぶ甲子園大会最速タイ。甲子園に帰ってきたセンバツ準V右腕の「ただいま」のあいさつ代わりの剛速球に満員のスタンドはどよめいた。

 しかし、結果は被安打11で7失点。何とか三重に勝利したものの、9回に2点差まで迫られる苦しい投球だったことで「申し訳ない気持ちでいっぱい。今日(の採点)は10点。初めに2点取られてその後、みんなが点を取ってくれたのに、最後に打たれて申し訳なかった」と笑顔はなかった。

 センバツ決勝で浦和学院(埼玉)に敗れ、リベンジに燃える怪物は剛腕に磨きをかけて160キロ到達を見据え、さらにスタミナ面の対策にも取り組んできた。悲願を達成するにはまず、甲子園の暑さに勝たないといけない。済美ナインは上甲監督の指示のもと、6月から冬用のグラウンドコートを着て練習に取り組んだ。キャッチボール、ランニング、バッティング…。他のナインはコートの下にアンダーシャツだけだったが、安楽はさらにナイロンのジャージーを重ね着した。誰よりも長い時間、その姿で練習し、滝のような汗を流した。

 上甲監督の方針で冷えた飲み物は禁止され、口にできるのは常温の水や清涼飲料水だけ。グラウンド近くに自販機が置かれていたが、それは冷えているため、手を出せず我慢するだけ。自販機との“戦い”でもあった。練習後は地元のサウナへ直行し、10分を1セットに3セット、汗を流した。食事も冷えたものでなく、うどんや牛丼などの“アツアツ”をかきこんだ。いずれも、体感温度が40度を超えるとされる灼熱の甲子園マウンドに打ち勝つためだった。

 夏の甲子園切符を勝ち取り、関西の宿舎へ。ここでも“地獄トレ”は続いた。練習後にナインが毎日近くの銭湯に行くことを義務づけられ、安楽も上甲監督と連れ立って風呂に入ったが、この温度がまさかの“熱湯甲子園”だった。

「10秒入っていられないほど熱いんです。水温45度を超えていた。ただでさえ外が暑いのに風呂までこれだけ熱いなんて…。これも暑さ対策の一環なんですけど…」とある選手。あまりの熱さに多くのナインが飛び出す中、安楽はここでも約10分間「熱い…」と耐えながらつかり続けているという。

 その鬼気迫る気合にナインも「とにかく熱さ対策をやってきた。特に安楽はみんなよりやっていたし、すごく熱さに強くなっている。それだけ燃えている証拠です。初戦に勝てたし、効果はあったと思う」と舌を巻くばかり。「次は自分らしく堂々とした投球をして150キロ後半を投げたい」と3回戦・花巻東(岩手)戦を見据えた安楽。さらに剛腕がうなりをあげるに違いない。