巨人奪首立役者は橋上コーチ

2012年06月10日 18時00分

 巨人が6日のソフトバンク戦(ヤフー)に4―3で競り勝ち、ついにセ・リーグ首位に浮上した。最強投手陣と自慢の強力打線がかみ合い、交流戦も現在13勝3敗1分けと首位を快走。開幕当初の不振がウソのような快進撃だが、その裏で見逃せないのが、これまでにはなかった「緻密な野球」だ。巨人にもはや死角は見当たらないのか。

 

 3―3で迎えた9回表、勝負を決めたのは、意表を突くダブルスチールだった。一死一、二塁の場面で、二走・長野と一走・坂本が森福の初球に完璧なスタート。この時点で試合開始から3時間30分が経過しており、延長はなかった。

 

 これで村田の気は楽になった。再三ファウルで粘り、2ボール2ストライクからの8球目を左翼ポール際へ大飛球。原監督はビデオ判定を求めたが覆らず。しかし、主砲は集中力を切ることなく中堅へきっちり犠飛を打ち上げ、長野が決勝のホームを踏んだ。単独首位は昨年4月15日以来だ。

 

 試合後の原監督は「結果的にあれ(重盗)が大きかった」と満足げに振り返ったが、作戦細部に質問が及ぶと「そこらへんは皆さんで推測してください」と不敵な笑みを浮かべた。

 

 指揮官が得意満面なのは、その陰でチームとして周到な準備を重ねている自負があるからこそ。そして今の巨人の〝データ野球〟を支えているのが橋上秀樹戦略コーチ(46)だ。

 

 森福のモーションについて、橋上コーチは「始動からたっぷり時間をかけて足を上げるし、クイックするわけでもない」と事前に分析。「選手個々や走塁コーチにもそうした情報は入れている。サインをスムーズに出しやすいよう、岡崎ヘッドと監督にも話はしていた」と種明かしした。

 

 橋上コーチの存在感は、選手間でも日に日に増すばかりだ。この日の試合で7号先制2ランを放った阿部は、試合前に橋上コーチに手を合わせ「神様、今日もお願いします」と頭を下げた。これには苦笑いで返したが、野手陣には今季から個別ミーティングを導入し、試合前やプレー中も綿密な対策を授けている。

 

 橋上コーチ自身、今は選手がデータの重要性を認識してきたと実感している。「みんな考えて野球をすることがだんだん楽しくなってきたんじゃないかな。(選手からの)質問の内容もピントが合ってきましたね」と笑う。

 

 他の首脳陣への影響も大きい。あるスコアラーは「橋上さんが加入したことで、他のコーチが熱心に研究するようになった。チーム状態が上向いた最大の要因はそこじゃないか」と指摘した。

 

 長らくの伝統だった〝大味野球〟を捨て、ようやく〝考える集団〟に生まれ変わりつつある巨人。この勢いは簡単には止まらないかもしれない。