ロッテのいだてん・荻野貴司 今年こそフルで見たい!

2019年03月06日 11時00分

荻野貴司

【球界こぼれ話 広瀬真徳】プロ野球選手にケガはつきもの。春季キャンプでも多くの選手が肉離れや張り、違和感を訴え、離脱を余儀なくされた。日々肉体を酷使する職業だけに、ケガ予防は選手にとって避けては通れない課題だろう。

 もっとも、主力選手の故障はチームの浮沈に直結する。特に選手層の薄いチームでは一人の離脱がペナント争いの致命傷になりかねない。その意味で今季、故障なくシーズンを戦い抜いてほしい選手がいる。プロ10年目の節目を迎えるロッテの外野手・荻野貴司(33)である。

 言わずと知れた球界を代表する「スピードスター」。打席から一塁までの走破タイムは常時3秒台後半から4秒台前半を叩き出す。平凡な内野ゴロですら安打にしてしまうため、パ・リーグの某投手は「出塁された瞬間に三塁まで行かれてもいいと思ってしまう。必要以上に警戒すると自分が疲れるだけ」と白旗を掲げる。それほど彼の足攻は相手に脅威を与え、同時に自軍を勢いづかせる。試合に出続ければ、日本を代表する足のスペシャリストとして後生に名を残す可能性すら秘める。

 だが、荻野は現時点でそうなれていない。要因は度重なる故障だ。

 プロ1年目。開幕から出場46試合で25盗塁を記録する華々しいデビューを飾りながら、5月に試合中の走塁で右ヒザ半月板を損傷。そのままシーズンを棒に振ると、翌年も右ヒザ痛を患い2度の手術を強いられた。以後、毎年のように周囲から期待されるも、腰痛、左肩骨折、肉離れなど故障の連続。昨シーズンも7月に死球を受け右手人さし指を骨折し、悲願だったフルシーズン出場を逃した。

「死球など偶発的なケガもあるとはいえ、荻野のケガはロッテの恒例行事のようなもの。プロ意識に欠けている」と厳しい指摘をするOBもいるが、私が知る限り本人は日々、故障への予防に余念がない。試合前後の体のケアは他選手以上に入念に行う。「ケガを防ぐために関節などの可動域を広げたりもしています。もう自分からケガをするようなことはしませんよ」と昨シーズン中盤に語っていた荻野。その直後の死球離脱は不運に尽きるが、故障防止の意識は高く、足の衰えも感じない。「もし1シーズンを通して活躍できたらどれほどの数字を残すのか」と期待が膨らむのは言うまでもないだろう。

 今季のロッテ外野陣はドラフト1位の藤原恭大(18=大阪桐蔭)が加入。昨季途中に藤岡貴裕(現日本ハム)とのトレードで移籍してきた岡大海らも含め混戦模様。とはいえ、チームは昨シーズンのように荻野離脱とともに下降線をたどる傾向も否めない。無類のいだてんが担う責任はルーキーや新戦力以上に重い。

 今春キャンプではあまり話題に上がらなかったものの、彼のように一人でチームの雰囲気を一変させる選手は球界内でもごくわずか。故障続きだったうっぷんを晴らすべく、今季こそは年間を通して存分に暴れ回ってもらいたい。

☆ひろせ・まさのり=1973年、愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心に、ゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。

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