【大下剛史 キャンプ点検】最下位からの巻き返しを期す阪神でキーマンを一人挙げるなら、今季で16年目を迎えた鳥谷だ。連続フルイニング出場が667試合で途切れた2016年ぐらいから思うような成績を残せず、ポジションも三塁や二塁へと変わり、昨年は連続試合出場も1939試合で止まった。今キャンプでの遊撃再挑戦は並々ならぬ決意の表れであることがうかがえる。

 評論家という立場で、特定の選手について「好きだ」「嫌いだ」などと言ってはいけないことは重々承知しているが、正直に言わせてもらえば、私は鳥谷敬という野球人が好きだ。まだまだ「やれる」と思っているし、もう一花も二花も咲かせてもらいたい。さらに、選手として復活すると同時に、若虎たちを鼓舞するような役割も果たしてほしいとも願っている。

 鳥谷の長所といえば、丈夫な体と、顔面死球で鼻骨を骨折しながらフェースガードをつけて翌日の試合に臨んだような熱いハートだ。一方で、喜怒哀楽を表に出さないことを良しとするクールな面がある。

 若いうちはそれでも良かったかもしれない。しかし、鳥谷は将来的に指導者としても阪神を背負うべき幹部候補生だ。若い選手たちだけでなく、フロントだって、苦境に立たされた鳥谷がどんな姿勢で臨むのかを“見ている”ということを意識してもらいたい。

 もちろん選手である以上はプレーで引っ張るのがベストだが、時にチーム事情からベンチを温めるようなケースもあるだろう。そんな時でも率先して大きな声でベンチを活気づけるようなところを見せれば、鳥谷自身の値打ちも上がるし、チームだって生まれ変わるはず。脱紳士、脱優等生の鳥谷をぜひ見てみたい。