元木コーチが名三塁手の遺伝子を岡本に注入

2019年02月08日 14時00分

特守でユニホームを真っ黒にする岡本

 ある意味で原巨人の浮沈の鍵を握るのはこの人だろう。元木大介内野守備兼打撃コーチ(47)は、現役時代に「くせ者」と呼ばれた名ユーティリティープレーヤー。今季からコーチとして14年ぶりに古巣復帰した。原監督からは「鬼軍曹」としての役割も求められている同コーチを、巨人OB・鈴木康友氏が直撃。そこで浮かび上がった今季最大のテーマは…。

 元気いっぱいの声が響いていた。サンマリンスタジアムに隣接するサブグラウンドで、全メニュー終了後、元木コーチは三塁定着を目指す岡本和真(22)を引き連れ、ノックを敢行した。左右に振られる強烈な打球に必死の形相で飛びつく背番号25の若武者に対して“Gの鬼軍曹”は妥協しない。

 時折、元木コーチのゲキが飛び交う中でも岡本は大量の汗を拭いながら充実した表情を見せていた。私が「ジャイアンツで過去のホットコーナーを守った名手を挙げてみろ」と口にすると、岡本は息を切らしつつ「長嶋さん、原さん、元木さんです!」と即答。決して本人がそばにいるから気を使ったわけではない。紛れもなく本音だった。大した目を持っていると、あらためて感じた。同じ奈良出身の後輩として喜ばしい限りだ。

 実際に元木コーチは現役時代、三塁のスペシャリストだった。2002年から03年まで巨人で一軍守備走塁コーチを務め、彼を間近で見ていたから誰よりも知っている。とにかく手首が強くスナップスローが素晴らしかった。

「岡本はどう?」と元木コーチに尋ねると「動きはいいですよ。僕よりもうまいです」。お世辞だろう。私から見れば、まだまだ岡本の動きは元木コーチの域に達していない。それでも元木コーチは岡本に成長の可能性を感じているからこそ、持ち上げながら本人のやる気を促している。自分の遺伝子を注入するつもりなのだろう。いい師弟関係を築けるはずだ。

 元木コーチは「岡本を三塁というポジションで安定させ、吉川(尚輝)も二塁に定着させたいです」とも打ち明けていた。特に今季のホットコーナーは成長著しい岡本とてポジションは約束されていない。一、三塁を守れる新外国人のビヤヌエバ(前パドレス)、新加入の中島(前オリックス)もいる。いくら4番候補でも競争に打ち勝たねばならない。その尻叩きを行うのが“Gの鬼軍曹”こと元木コーチの使命だ。

 だが、この“鬼軍曹”のフレーズについて元木コーチ本人は苦笑いで「僕はデカイ声を出しているだけで、それはマスコミが書いているだけです」と謙遜していた。いや、今のチームでその役割を果たせるのは、かつての巨大戦力の中での、厳しい競争を生き抜いた元木大介しかいない。最後に「サインをどうしようか考えています」と目を輝かせた彼を見て「くせ者」ならではの独創的なコーチングが実に楽しみになってきた。