巨人・阿部慎之助捕手(39)が注目発言だ。19年目となる宮崎春季キャンプを順調に過ごす背番号10を直撃。4年ぶりに復帰した捕手で改めて味わう難しさから、若手選手との「ジェネレーションギャップ問題」、さらには原辰徳監督(60)が、阿部を候補の一人としている「ヘッドコーチ格」についてまで、阿部が笑いを交えながらその胸中を明かしてくれた。

 やはり背番号10にはマスク姿がよく似合う。阿部はこのオフ、原監督に捕手復帰を直訴。言うまでもなく扇の要は故障のリスクが高く、現役生活を強制終了させかねない重労働だ。それでも阿部は覚悟を決め、慌ただしい毎日を送っている。

 阿部「懐かしさよりも、これからまた難しさが出てくると思いますよ。やっぱり疲れますね。疲労度が全然違う。体が張るところも全然違うし、座る時間が長いからこのへん(太もも)とかね。でも、心地いい疲れですね。ああ、こんな感じだったなあって」

 たとえば、キャンプ4日目の4日はこんな一日だった。メイン球場のサンマリンスタジアムでシートノックまでを終えると、捕手道具を手に小走りで隣接する新ブルペンへ直行。高卒3年目で20歳の高田の投球を初めて受け、再びメイン球場へ急いで戻ると打撃などのチーム練習…。最後は滝のような汗を流しながら走り込みを行い、全メニューを消化した。そんな慌ただしい毎日を送るが、捕手としての“ブランク”も感じているという。

 阿部「やっぱりショートバウンドに対する反応だったり、ちょっと遅れたりすると体が付いていかなくなっちゃう。これはもう宮崎でも練習するしかないし、やっぱり反応。ちゃんと動けるようになるまでには、数をこなして慣れていくしかないですね」

 ブルペンでは“未知との遭遇”の連続だ。高田と同学年の大江は、極度の緊張から阿部に座ってもらうこともお願いできなかった。かねて気にしていた「ジェネレーションギャップ」も肌で感じているようだ。

 阿部「いやねえ…。(大江の時は)不思議な感覚に陥りましたね。今日の高田もフォークを持っているのに、直球とスライダーばっかり投げるから。まあでも、自分に置き換えて考えてみたら、20歳上だったら「この人、誰だろう」って思うかもしれない。年齢的には息子でもおかしくないからね(笑い)」

 今後は世代間ギャップを埋めることは課題の一つとなりそうだが、阿部の「今後」にも注目が集まる。V奪回と指揮官の後継者育成の重責を担う原監督は、年明けの本紙インタビューで空位となっているヘッドコーチのポストについて「理想は来年、いい形で誰かヘッドコーチが入ってくれれば」と明かし、その候補として阿部と松井秀喜氏の名前を挙げたところ「本当にいいところを突いていると思います」と否定はしなかった。この点、阿部本人はどう感じているのか…。

 阿部「『いいところを突いてる』ですか…(笑い)。ヘッドコーチを置かないと聞いた時、ドキッとしましたね。勝手に。そう必要だと思われなくちゃいけないからね。頑張りますよ。(来年に限らず、将来の夢として)指導者をできたらいいなと思ってはいます」

 もちろん、阿部はあくまでも一選手として全力でペナントレースを戦い抜き、V奪回の原動力となる覚悟。正捕手争いも炭谷、小林…とライバルも多く、通算400本塁打まであと1本に迫る。だが、一方の球団にとって原監督の後継者育成は喫緊の課題。

 原監督がコーチ時代、長嶋監督の下で“監督修業”したように、阿部もいずれは同じ道をたどることになるのか…。背番号10の今後からますます目が離せなくなりそうだ。