第3次原巨人が“謝罪”からの船出だ。5年ぶりのV奪還を狙う巨人・原辰徳監督(60)が31日、キャンプ地の宮崎に入り、一軍首脳陣、選手らとともに宮崎神宮を2年ぶりに参拝した。1960年から58年続いた伝統行事は、昨年「球団スケジュールの都合」で取りやめていた。原監督の指揮官復帰とともに参拝が復活する形となったが、その舞台裏では何が起きていたのか――。

 これも指揮官のパワーなのか。宮崎空港到着後、宮崎神宮へと直行した原監督が参道に降り立つと、それまで降り続いていた雨がピタリとやんだ。時折、雲の隙間から光まで差し込むなか、待ち受けた約400人のファンからは無数のシャッターが切られ、指揮官を先頭にナインたちが本殿へと足を進めた。

 参拝を終えた指揮官は「ジャイアンツのいつものキャンプが始まるぞという風景でね。私自身も4年ぶりではありますけれども、選手たちの顔を見られたということと、いよいよスタートするなと、そういう気持ちですね」と気合の入った表情を見せた。

 主祭神である神武天皇の東征開始の地とされる同神宮での必勝祈願。同神宮関係者によれば、巨人がキャンプ前日に参拝するようになったのは「宮崎キャンプ2年目(1960年)」から。しかし、昨年は「球団スケジュールの都合」により、異例の取りやめとなった。それが、ただちに復活したのはどのような経緯があったからなのか。

 前出の神宮関係者は「昨年末ごろ、巨人さんから『申し訳ありませんでした』と、参拝を再開したいとの連絡がありました。それでも当初は監督、球団幹部、選手代表による小規模な参拝となる予定だったのですが、直前になって一軍選手全員による参拝に変わりました。ずっと続いてきた元の形に戻ってホッとしています」と明かした。

 昨年の“参拝中止”を巡っては、球団内から「ずっと続いていたことで、しかも参拝という神様に関することなんだから完全にやめることはなかった。球団の代表が行くとか何か方法はあったはず」と疑問の声が上がったのも事実だ。同神宮としては、巨人サイドから“謝意”が伝えられたことで、快く再開を受け入れたのだという。

 4年ぶりの再々登板となった原監督にとっては、キャンプイン前日の同神宮への参拝は現役、監督時代を通じての恒例行事。巨人が21度目の日本一となった翌2010年のキャンプ開幕前日には宮崎市内でパレードが行われた。当時の原監督らV戦士は同神宮に伝わる神武東征ゆかりの古代船「おきよ丸」を模した船形の乗り物に乗り込んでおり、その縁は深い。

 指揮官を現役時代から知る神職の男性は「去年は中止を知らないファンが待ちぼうけを食ってかわいそうでした。原さんは4年ぶりでしたが、例年通り、あいさつしてくれました」と復活を喜んでいた。また、初めて同神宮を参拝したドラフト1位左腕・高橋(八戸学院大)は「神社で必勝祈願をしたことはありましたけど本殿まで入ってというのは初めての経験でした。いよいよ始まるなと厳粛な気持ちになりました」と背筋を伸ばした。

 最後に原監督は1日から始まるキャンプに向けて「デー・バイ・デーと言いましょうか。一日一日を積み上げながら。時間がありそうで、そうはありませんので。しっかりチームをつくり、ペナントレースに戦いを挑んでいきたい」と指揮官としての意気込みを語り、ナインには「自分がチームを引っ張るというメンバーが何人揃うか。それが強いチーム、組織になっていく」とゲキを飛ばした。

 紆余曲折を経て出航する原巨人。さあ、球春到来だ。