V奪回を目指す巨人では選手たちが新指揮官の決断に注目している。いったい何かと言えば、2月1日から始まる春季キャンプについてだ。再々登板の原辰徳監督(60)は昨秋のキャンプで概要を大きく変更した。なかでも特徴的だったのが練習時間の大幅短縮だ。選手の自主性を重視し、量よりも質を追求したというスタイルが、ナインの間で好評となり“時短キャンプ”の継続を求める声が上がっている。

 5年ぶりのV奪回へ、あと1か月足らずで春季キャンプが始まる。スタートは一、二軍が宮崎、三軍が沖縄で従来通り。メンバーの振り分けは後日決定され、チーム内の競争も本格化していく。詳細は首脳陣が詰めていくことになるが、原監督が着任した直後の秋季キャンプでは大きな変化があった。その最たる例が時短だ。

 由伸前監督時代はチームの底上げをテーマに掲げ、若手野手には全体練習前から徹底的にバットを振り込ませた。打撃練習だけで4時間を費やした日もあり、選手は全身がつるなど悲鳴を上げ、朝から10時間もの猛練習が終わるころにはすっかり日没を迎えていた。

 ところが指揮官の交代で様相は一変。原監督は「(日没前の)5時ぐらいまでには終わろう。レスト(休息)も非常に重要な作業」と号令をかけ、練習時間は2時間ほど短縮された。前政権から留任した吉村打撃総合コーチは「昨年は若い選手とレギュラーの差があり過ぎて数も必要だった」と前置きしつつ「(原)監督はダラダラやることが好きじゃない。今年は選手に自分で考えさせようということで。チーム練習の中であったり、限られた時間の中で自分に必要なこと、課題をやりなさいということ」と説明する。

 その一環で連日行われていた早出の打撃練習も“禁止”に。選手個々のストレッチなどに充てることになった。ターニー・トレーニングコーチは「ストレッチやウエートも全員に合うわけではないですから。こちらから指示することもありましたが、自分に必要なものは何なのかを考えてもらった」と言う。

 こうした変化をナインはどう感じていたのか。昨秋のキャンプで野手キャプテンを務めた石川は「振る量は減ったかもしれませんが(練習の)密度は濃かったです。(球場から宿舎に)帰ってからは体をケアする時間にしていた」と充実感を漂わせていた。別の野手も「量も大事なのは分かっていますが、やはり集中力には限界があります。長く、たくさんやれば、というのは…。春はベテランの方もいるのでどうなるか分かりませんが、練習時間は秋の路線でいってほしいです」と訴えている。

 量か質か――。どちらが得策か一概には言えないが、ナインは時短キャンプを熱望している。