日本ハムからドラフト1位指名された吉田輝星投手(17)ら金足農野球部が28日、秋田市文化会館で行われた秋田県県民栄誉章顕彰式に出席。今夏の甲子園で県勢103年ぶりの準優勝に輝いた功績をたたえられ、県民栄誉章を贈られた。野球界からは落合博満氏、山田久志氏に続いて3例目。今後さらなる活躍が期待されるなか、早くも“輝星フィーバー”が秋田の財政に大きな影響を与えている。

 ユニホーム姿で1000人を超える県民らの大歓声に迎えられて入場した吉田は、佐竹県知事からメダルをかけられ、固く握手を交わした。その後の記念報告会では地元の中学生や幼稚園児らと交流。チームメートの高橋佑輔の母校・勝平中の球児から「甲子園を通して成長したことは」と質問を受けた吉田は「試合を通して日替わりでヒーローが生まれた。目立ちたい、自分が決めてやろうという気持ちが大事。特に先輩の高橋佑輔はすごい目立ちたがり屋で、そういう気持ちが成長した」と話し、会場の笑いを誘った。

 さらに吉田は部を代表して「後輩たちには自分たちの結果を超えるように僕たちよりも厳しい練習を自らしてほしいと思っています。自分も後輩たちに負けないように、北海道から熱いニュースを届けられるよう頑張ります」と宣言し、会場は万雷の拍手に包まれた。式典後には「こういう賞をもらうのは初めてで今までやってきたことがすごいことなんだという実感が湧いた。自分たちの活躍は支えてくれた県民の方のおかげ。ファイターズでも1年目からしっかり一軍で活躍したい。新人王も目指して頑張りたい」と抱負を語った。

 プロではまだ一球も投じていないが、今夏の甲子園での熱闘を機にブレークした吉田人気は衰え知らずだ。この日も公募した一般参加では1万人を超す応募があり、当選の倍率は約13倍となったほど。その知名度の高さから、最近では地元秋田の財政に好影響を与えている。その最たる例が15日に日本ハムと仮契約を結んだ思い出の地でもあるポートタワーセリオンの“V字回復”ぶりだ。

 同施設は赤字経営で話題となった第三セクターが総工期間2年、総工費43億円をかけ、1994年にタワーが設立されたものの、2年後の96年には経営が悪化。2006年に市が9億円で買い取ったという過去がある。秋田の財政難の象徴ともなっており、仮契約の際にも日本ハムの関係者が「格安の使用料でしたね」と話していたほどだった。

 それがここへきて一変した。吉田の仮契約を機に入場者が倍増し、現在は行列ができるほどの人気スポットに。お目当ては吉田が窓ガラスに残したサインで、サイン越しに映る夜景とともに写真に収め、インスタグラムなどのSNSで投稿する人が相次いでいる。

 同施設の建設に携わった秋田県庁の元職員は「県外の方が大勢いらしてお金を落としていってくれていると聞いている。学校だと周辺住民に迷惑がかかってしまう恐れもあるが、セリオンはもともと商業施設なので大歓迎。アルヴェ(秋田駅前の複合商業施設)や、ふるさと村(横手市の観光スポット)にもサインをお願いしたいくらい」と熱く語る。

 あらためて生まれ育った秋田の人々への恩返しを強く誓った吉田。プロでの活躍で、さらなるフィーバーを巻き起こしたいところだ。