堤GM失脚から始まった 由伸巨人“二人三脚体制”の崩壊

2018年10月25日 16時30分

23日の会見で握手を交わした(右)から由伸前監督、原新監督、山口オーナー

【由伸の孤闘 ラストシーズンの真実<下>】巨人は再々登板となる原辰徳監督(60)の下、再建への道を歩み出すこととなる。政権交代とともに親会社の読売本社が今回着手したのが、GM職撤廃を含む大胆な球団改革だ。由伸前政権で目指した現場とフロントの分業体制を見直し、選んだのは編成業務を含めたチーム運営の“アウトソーシング”。実績と経験豊富な新指揮官への“全権委任”は実を結ぶのか――。

 球団からすれば由伸監督は従順な指揮官だった。現場運営への責任感は強いが、フロント業務への口出しはしなかった。だからこそ現役を引退させてまで、その地位に据えたとも言える。監督就任時、慶大野球部の先輩でもあった当時の堤GMは「編成業務は任せてもらうが、現場介入はしない」と二人三脚でのチーム運営を約束した。

 第2次原政権の末期、読売本社はフロント弱体化による球団内での監督の発言力、影響力の拡大に懸念を抱いていた。監督交代を実現させると、GMを頂点としたフロント体制の刷新に着手。短期的視野に立った補強への反省からスカウト体制の見直しを図り、三軍創設などに動いた。

 ただ親会社の介入が度々起こる巨人独特の縦構造は変わらなかった。本社経営陣の意をくみつつ、現場とコミュニケーションを図り、かつ膨大な編成業務をスマートにこなせる人物はグループ内を探してもそういない。昨年6月に球団ワーストの13連敗を喫して堤GMが失脚。後任GMの鹿取氏には前任同様の権限は与えられず、石井球団社長が事実上のGMとなってからは、当初の“二人三脚体制”が崩壊した。由伸監督とフロントの間に隙間風が吹き始めたのもこのころからだ。

 同時に読売本社内では3年目に突入してもチームは黒星を積み上げ、優勝争いにも絡めないことで、由伸政権への不満が膨らんでいく。そうした空気の中で今年7月、山口寿一新オーナーが就任。グループ本社の社長が陣頭指揮を執り、チームとフロント双方の再建を託せる人物として、恥を忍んで原氏に再々登板を頼むことになった。

 だが、そもそも高橋由伸にほれ込んで政権樹立に動いたのは山口オーナーだった。“時計の針を戻す”との批判も覚悟の方針転換には、じくじたる思いを抱いているはずだ。「危機感」と繰り返す表情からは自己反省の意も伝わる。

「チームは戦力の過渡期にあって、フロントにも課題がある。チームに関しては原監督に全てお任せする。編成に関しても監督の意向を完全に尊重する」として全権を譲り渡したのは、苦渋の決断だっただろう。

 百戦錬磨の原監督はFA・トレード交渉など、球界の裏仕事にも通じている。アマ球界まで広がる人脈と眼力を生かした人材発掘への期待は高い。一方で昨今の球団運営は海外や他業界からの知識、情報が次々と流入し日進月歩の世界だ。実績と経験を生かし、新たな風も取り入れて前進できるか。球界の盟主であり続けるための勝負に、巨人は打って出た。(おわり)