「プロフェッショナル杉内俊哉」を感じた瞬間

2018年09月13日 16時30分

引退会見で涙をこらえる杉内

【取材のウラ側 現場ノート】巨人の18番を背負いながらも最後まで巨人の色には染まらず、球界を代表する左腕としての誇りを最後まで保ったのが杉内俊哉という投手。チームに溶け込みながらもなれ合いを嫌い、常に孤高の空気をまとっていた。

 プロフェッショナルという言葉が似合った杉内の野球観に触れたのが、現役最後のキャンプとなった今年2月の宮崎。左肩故障で三軍スタートとなった左腕と、若手投手のシート打撃登板を横に並んで見る機会を得た。

 のどかな雰囲気のグラウンドに鋭い視線を向けていた杉内に、ふと「これまでの野球人生で楽しいと感じたことは?」と聞いてみた。すると彼は食い気味に「ないね」。続けて「充実しているというのと、楽しいのは全然違う。だから楽しいと思ったことはない。僕は社会人出身だから余計に思うんだけれど、ここよりもずっとピリッとした環境でやってきたから」と返ってきた。

 ノーヒットノーランを達成したときですら「顔が笑っていたとしても、楽しいとかじゃない。あのときは自分の投球に酔っていただけ」という。

「野球が好き、というのはここまでやってきたんだからそうなんだと思うよ。でも、プロに入ってからは楽しいと思って野球をやったことはないね」。杉内がそう言い切った直後、シート打撃登板を終えた高卒3年目の大江が走り寄ってきた。「スライダーは良かったよ。あとはさ…」。助言をもらった若い左腕のうれしそうな顔は印象的だった。巨人はコーチ職を打診する見込み。厳しいだろうが、きっといい指導者になるはずだ。

 あの流れるようなフォームが見られないのは寂しい限り。だが18番が注ぎ込んだ厳しさは、巨人にしっかり受け継がれる。(巨人担当・堀江祥天)