「第12回BFA U18アジア野球選手権大会」高校日本代表は10日、KIRISHIMAサンマリンスタジアム宮崎で行われた中国と3位決定戦に14―1の7回コールドで勝利。来年韓国で開催される「第29回WBSC U―18ベースボールワールドカップ」の出場資格を死守した。この日、注目の吉田輝星投手(3年=金足農)の登板はなかったが、注目の進路はどうなるのか。プロか、大学か、今大会で大きな変化が出ているという。

 日本は初回、先発板川(3年=横浜)が3安打を浴び1失点。敗れた韓国戦、台湾戦同様、先制点を許す悪い流れも、柿木(3年=大阪桐蔭)の好リリーフで切り抜ける。打線は毎回得点で中国を突き放し、6回には打者一巡の猛攻でダメ押しの5得点。どうにか来年以降のU―18にたすきをつないだ。

 この日の登板はなかったが、大会を通じて主戦を任された吉田は「チームは3位で次の世代にバトンをつなげたが、自分としては全然満足のいくピッチングができなかった。(敗戦を)取り返す機会はなくなってしまったけど、未来を向いて次のステージで頑張っていきたい」と総括。今後の進路については「国体が終わってから、どういうところでやるか考えたい。そこからでも遅くない。自分が後悔しない道を選びたい」と話すにとどめた。

 この日は前日吉田のもとを電撃訪問した金足農の中泉監督に加え、吉田の父・正樹さんも試合を観戦。11日に秋田へと移動する際には混乱も予想されるため、引率のために駆けつけた。今後は中泉監督と両親も交えて進路を固めていくという。

 中泉監督をよく知る関係者によると「今大会、不本意な結果に終わった吉田君は、自分がどこまで通用するのか不安もあるでしょう。八戸学院大に進学させたい中泉さんからすればこの状況は好都合。国体でもう一度万全の状態で大阪桐蔭や他の強豪と対戦させて、勝てたら納得の上でプロへと行けばいいと説得する可能性は高い。もちろんそう何度も勝てる相手ではないでしょうから、力のなさを痛感させるもくろみもあるはず」。今大会や国体の結果を受け「やはり即プロでは通用しないのでは…」と吉田が弱気になったところを、一気に大学進学へと説得する。そういうシナリオがあるという。

 一方、吉田家と近しい人物は、プロ入りの鍵を握るのは吉田の祖父の「理正さんでは」と見ている。


「おじいちゃんっ子だった輝星君の野球の原点が理正さん。若いころはJAのクラブチームでエースや捕手をこなし、高校野球の審判資格も持っているほど、野球に情熱のある方。輝星君が小さいころは家の前で毎日のようにキャッチボールの相手をしていました。甲子園の間は家を空けていて先日帰ってきたんですが、本当に毎日うれしそうで。おじいちゃんに早くプロのユニホーム姿を見せたい気持ちは強いでしょう」

 おじいさん思いの吉田なら、大学進学を勧める周囲の声に、悩みに悩みながらも「プロ入り」を決断するのではというのだ。

 吉田の父・正樹さんと中泉監督の恩師で、吉田と八戸学院大・正村監督を引き合わせた島崎久美前金足農監督は「日本の最高峰の子らとやって、本人が一番力のなさを感じているでしょう。私は進路は本人次第と思っている。話し合いに参加するかはわからないが、声がかかったら伝えられることは伝えたい」と話したが…。

 プロか大学か、進路を決める吉田の“内なる闘い”はまだ続きそうだ。