第100回全国高校野球選手権記念大会で準優勝した金足農(秋田)で23日、甲子園報告会が行われ、全校生徒約500人、地元住民約1000人が見守る中、金足農ナインが感謝の言葉を述べた。前日に行われた報告会でも約1000人、空港には1400人の県民が押し寄せるなど、地元秋田はまさに“金農フィーバー”一色。その一方、異例の事態の裏側では、さまざまな混乱も起きていた。

 秋田県中が熱狂した甲子園大会から2日が過ぎても“金農フィーバー”は収まらない。

 この日、金足農は決勝戦と重なった21日の始業式を2日遅れで実施。その後、校庭で行われた報告会の冒頭で渡辺勉校長が「8月21日までに協賛金が約1億9000万円。当初はお金が足りず、応援を続けられるか心配していたが、予想以上の集まりで、公立校としてはあまりに多くの金額に驚いております」と恐縮気味に報告すると、集まった大勢の観衆からはどよめきが漏れた。

 吉田輝星投手(3年)は「自分たちが準優勝できたのは応援のおかげ。結果は準優勝ですが、全国制覇にもふさわしい応援をありがとうございました」と感謝の言葉を述べた。

 その後は体育館で報道陣に向けた記者会見が行われ、あらためて吉田は「たくさんの応援で準優勝できたことは誇りに思う。大阪桐蔭との試合で、自分の力のなさを感じた。決勝は大敗でしたが、それは次のステージで自分が活躍するための土台として、心の中に持っておきたいです」と今大会を総括。22日夜は久々に家族で食卓を囲んだといい「ホテルのごはんもおいしかったですが、家で食べるごはんは格別。甘いものをまだ食べていないので、チョコバナナが食べたい」とはにかんだ。

 膨れ上がった協賛金のみならず、秋田県勢103年ぶりの決勝進出の裏では関係者のうれしい悲鳴も聞こえてきた。学生野球憲章の規定により、原則甲子園出場校の凱旋パレードは禁止されているのだが、22日の帰郷の際には空港や学校までの沿道に人があふれて横断幕が掲げられるなど、実質的なパレード状態。学校関係者も「どこから時間や経路が漏れたのか」と目を丸くする。

 その中心にいる吉田の周囲はさらに騒がしさを増している。22日に吉田がツイッターを開設すると、フォロワーは瞬く間に8万人に到達。実は部として、野球に関係のないSNSを禁止していることもあり、現在はアカウントを停止しているが、その後はなりすましによる偽アカウントが乱立。「今いる吉田輝星くんはすべて偽者です!」という拡散ツイートが出回るなど、収拾がつかない事態が続いている。

 また、巨人志望を公言してしまったことについても、高野連では逆指名を禁じているため、周囲はピリピリ。現在高野連から注意などは届いていないというが、この日の報告会後に行われた記者会見では特定の球団に関する質問が禁止された。注目を集めている進路について、吉田は「甲子園から帰って1日たって、準優勝の余韻に浸っているところ。まだ進路は決まってないです」と話すにとどめた。

 さらには大手ネットオークションサイトのメルカリやヤフオクなどで、吉田のサインボールや金足農のユニホームが高値で取引されており、野球部の久米部長も「甲子園見学の日に、人混みに紛れて何人かにサインしてしまったようで。(オークション出品は)信じられないというか、いろいろと頭が痛いですね」と困惑しきりだ。

 来るU-18に向けて「すごい能力を持ってる選手たちと今度は味方で一緒に日の丸を背負って戦えるのは光栄なこと。今度は秋田、東北でなく日本を背負う覚悟が必要になる。自分の全力がどこまで通用するかわからないけど、今ある全力で臨みたい」と言葉に力を込めた吉田。当分、フィーバーは収まりそうもないが、それだけ甲子園で見る者の心を揺さぶる、すごいことをやってのけたということか。