特大プロ1号・清宮の知られざるエピソード 密着の番記者が明かします

2018年05月10日 16時30分

記念すべきプロ初本塁打を放ちナインの祝福を受ける清宮(左)

 ついに出た。日本ハムのドラフト1位ルーキー・清宮幸太郎内野手(18)が、9日のオリックス戦(京セラ)に「5番・一塁」で先発出場し、2回の第1打席で待望のプロ1号本塁打を放った。相手先発・ディクソンの変化球を強振し、右翼席へ文句なしのソロアーチを叩き込んだ。そんな怪物ルーキーの“晴れ姿”には本紙清宮番記者も感無量。高校1年時から密着取材を続けてきた佐藤佑輔記者が、知られざるエピソードを明かした。

「打った瞬間、という感じでした。これまでいろいろと打席を重ねてきて打てたホームランなので、マグレではないかなと思います」

 その言葉に、内心「らしいな」と思った。早実入学直後の“ビッグマウス”清宮は、それから主将を経験し、同世代の仲間と日の丸を背負い、人間的にも大きく成長した。対戦相手やチームメートへの気遣いを覚え“大口”こそ減った怪物だが、それでも譲れないプライドを久々に垣間見た気がする。

 幼いころから注目を浴び、高校での鮮烈なデビュー。素直で奔放なキャラクターもあいまって、世間からのやっかみは少なからずあった。そのなかで苦悩しながらも結果を出し続けてきた姿を、間近でずっと見てきたつもりだ。

 高校3年の招待試合では、後輩の前打者を敬遠され、半ばショー的に勝負を選ばれたことに珍しく怒りをあらわにした。重苦しい雰囲気のなか行われたその日の取材では「ちゃんと勝負してほしかったです…」と悔しそうに声を絞り出した。プロ入り後、限局性腹膜炎で離脱していた最中も自らの記事に目を通し、ヤフーコメントに並ぶ辛辣な反応も正面から受け止めていた。自身に批判的な声すらも力に変えてきたのが清宮だった。

 選手宣誓を務めた3年夏の東京都大会開会式。あまりの堂々とした宣誓に「ナイス宣誓、よかったよ」と声をかけた。ニヤリと笑みを浮かべ「余裕っす」と返されたときは言葉が出なかった。

 カナダで行われたU―18W杯では、主将でありながら結果の出ない自分に憤っていた姿が印象的だ。その2年前のU―18でチームメートだった2年先輩の佐藤世那(オリックス)は「僕らのときも、三振して鏡の前で泣きながらバットを振っていた。甲子園が終わって、僕らが遊び半分で参加していたU―18で、アイツは一人だけ世界と戦っていた」と教えてくれた。

 学校側から取材禁止を厳命された早実の文化祭では「取材ではなく、あくまでプライベート」の建前で、特別にクラスの舞台を鑑賞させてもらった。U―18が終わった直後、クラス委員長でありながら、ほとんど準備に参加できていないなかで“オイシイ”役を演じる清宮を見て、学友にも愛されている姿を知った。脇役が一人もいない、素晴らしい舞台で、不覚にも感動してしまったことを覚えている。

 今年のアリゾナキャンプ前には、囲み取材で「清宮くんは日本人と向こうの女性、どっちがタイプなの?」と質問し、場を凍らせてしまったこともある。あとでフォローを入れると「気にしてないっす」と笑顔を向けてくれ、胸をなでおろしたのも懐かしい。私が早実の和泉監督を怒らせてしまった話をすると「またなんかやったんですか? いつものことじゃないですか」と笑いながら慰められたこともあった。

 この日の試合後、京セラドームのビジター駐車場へ向かう階段の中ほどで、清宮を待った。「おめでとう」とこぶしを差し出すと「ありがとうございます」と照れくさそうに合わせてくれた。

 これまで怪物ならではの苦悩を、逃げずに正面から受け止め、いくつも乗り越えてきた。そして周囲への気配りを忘れず、接した誰もがいつの間にかファンになってしまう。私は長嶋さんや王さんの現役時代を知らないが…スーパースターとはきっとこういうヤツがなるんだろうな、と思っている。

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