【アゼルバイジャン・バクー26日発】柔道の世界選手権第7日、女子78キロ超級で朝比奈沙羅(21=パーク24)が初優勝。初出場の昨年大会で2位だった悔しさを晴らした。朝比奈は「去年負けてから389日がたち、その時の先の景色を見ることができて幸せ」と笑顔で話した。

 174センチ、125キロの日本人離れした体格。“世界最強の女”となった朝比奈は、東京五輪金メダルと医師の道を同時に目指していることでも知られる。移動の電車内で単語帳を読みふけり、予備校に通いながら柔道の練習を続け、“二刀流”にまい進する日々だ。

 実は当初、五輪までは柔道一本に集中する計画だった。それがなぜ変更になったのか。無謀な二刀流挑戦のようにも見えるが「逆ですね。どっちも追いかけないと、どっちも取れない」(父の輝哉さん)。

 その経験は高校時代にさかのぼる。朝比奈は今以上に文武両道の道を突っ走った。輝哉さんによれば「勉強も相当やらないといけない。英語、数学、物理。それで柔道もやっていた。でも高校の時が一番充実してたって言うんですよ」。一度は大学で柔道だけを極めようとした。しかし、それは朝比奈の性分に合っていなかったのだ。

 勉強を再開し、いい意味で自分自身にプレッシャーもかけた。朝比奈自身も「一個のことに集中すると、視野が狭くなっちゃう」とかけ持ちのメリットを語る。「柔道が勉強の息抜き」と相乗効果も生まれた。

 とにかく多趣味だ。「まずはラグビー観戦。あとは一眼レフ、ドライブ、料理、観光とか旅行も好き。映画は一日中見ているし、小物作りも…」と止まらない。これからさらに多忙になるが、朝比奈にとっては追い風。前人未到の金メダリストと医師のダブル偉業をしっかりと射程圏にとらえている。