1995年に地下鉄サリン事件などを起こしたオウム真理教の麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚(63)と元幹部の計7人の死刑執行を受け、同教団の元幹部で「ひかりの輪」の上祐史浩代表(55)が6日、東京地裁内の司法記者クラブで記者会見した。事件当時、教団のスポークスマンだった上祐氏はその冗舌さから“ああ言えば上祐”といわれたが、会見はわずか10分であっけなく終了。しゃべり足りないであろう上祐氏は本紙に松本死刑囚の死刑執行や分裂した教団の今後を語った。

 会見で上祐氏は、教団が起こした事件について「私にも重大な責任があり、被害者に深くおわびしたい」と語った。

 語るべきことが多いはずの上祐氏だったが、司法記者クラブからの質問はすぐに途絶えた。テレビ関係者は「突然の死刑執行を受け、セッティングされた会見で、記者側に準備が足りなかったのは確か。同クラブ詰め記者のほとんどは20~30代で、オウム事件を知らないこともあるが、各社とも上祐氏の会見がここまで注目されるとは思っていなかったこともあるだろう」と言う。

 ひかりの輪のホームページには「本日は、くしくも、当団体が被害者団体との間で被害者賠償契約を締結した日(2009年7月6日)から、ちょうど9年目の節目の日でもあります。この日に執行されたことの重みもかみしめ、当団体はよりいっそう被害者の皆さまへの被害者賠償に努めるとともに、アレフの拡大抑止などの事件再発防止に努めていきたいと思います」という文章が掲載された。

 そもそも上祐氏は1993年9月からオウムのモスクワ支部長を務め、ほとんどをロシアで過ごした。95年3月の地下鉄サリン事件後に松本死刑囚から日本に呼び戻され、スポークスマン的な役割を果たした。そのためサリン事件などに関わることがなかったというポジションだ。

 本紙はその上祐氏に直撃した。なぜ、この日、死刑執行になったのだろうか。上祐氏は「私には詳しくは分かりませんが、平成の事件は平成のうちに終わらせるという法務省サイドの意思の表れだと思います」と話す。

 何より、今回の死刑執行によって心配されるのが、松本死刑囚が神格化され「アレフ」「山田らの集団」など、一部のオウム後継がよりカルト化、凶暴化する危険性だ。

「アレフ、山田らの集団では、長年連絡が全くない中で、既に麻原は神格化されています。目には見えないが、道場に存在していると教えていたり、麻原に会ったという妄想を語る幹部信者もいます。よって、執行によって新たに神格化されることをそれほど心配する必要はないと思います」と上祐氏。

 これ以上の過激化はないと推測する一方、松本死刑囚がかつて獄中で「私は死刑にならない。不死の体を得た」と言ったことを信じている信者の信仰を弱めることができそうだという。

「本日の死刑執行の結果、麻原が無罪となり戻ってくるとか、文字通り不死の身体を得るだろうなどと妄信していた信者は、目が覚める可能性があると思います。全体として、執行はアレフの拡大を抑制すると思います」(上祐氏)

 執行された他の死刑囚のほとんどはオウムに入団する前はエリートだった。上祐氏も含め、なぜバブル期にエリートたちが松本死刑囚に引き寄せられたのか?

 上祐氏は「バブル期といえば、日本経済・ジャパンマネーが世界を制するといった妄想が広がっていましたが、経済における慢心・誇大妄想が経済のバブルだとすれば、精神世界での慢心・誇大妄想が、オウム真理教だったと思います。今と違って日本全体が、誇大妄想に陥りやすい時代背景があったのではないでしょうか」と振り返る。

 ちなみに、今回の執行を受け、テレビ各局はオウムの映像を繰り返し放送。「ショーコー、ショーコー、ショコショコショーコー、麻原彰晃」「ショショショショ、ショーコー」「ソソソソソソソ、尊師ー」など、松本死刑囚が作詞、作曲した楽曲がかなり流れた。

 上祐氏は「麻原の死亡に伴い、今後は麻原の妻や子供たちが麻原の著作権を共有しますが、アレフに反対する子供たちの一部が、アレフが著作権を利用することに反対することが予想され、その結果、アレフは麻原、オウムの教材を使いにくくなり、アレフの拡大を大きく抑止する可能性があります」と話した。松本死刑囚が残した楽曲の今後も注視する必要がありそうだ。