物議を醸しているドーピング容認の国際大会「エンハンスト・ゲームズ」(来年5月、米ラスベガス)は、海外でどのように捉えられているのか――。次々と有力選手が参戦を表明する中で、2022年の陸上世界選手権オレゴン大会で男子100m覇者のフレッド・カーリー(米国)まで参戦を表明。花形種目の金メダリストの電撃参戦にさらなる激震が走っている。そこで世界各国メディアの陸上担当者を直撃。大会への反対意見の一方で、〝本音〟も漏れてきた。

 東京で陸上の世界選手権が開催されているさなかの9月18日、エンハンスト・ゲームズ主催者が男子100m元世界王者の大会参戦を表明した。世界選手権が盛り上がりを見せる中での発表は衝撃を呼んだ。そこで会場で取材を担当する海外メディアに同大会への見解を聞いた。

 アイルランドメディア「ブリックフィルムズ」のダラ・バンブリック氏は「この大会は真の競争精神に反し、子供たちへの悪い例になってしまう」、エストニアメディア「Postimees」のマルコ・スージー氏は「スポーツは常にクリーンで、アスリートは常に子供たちの模範であるべきだ」と未来の競技者たちへの悪影響を懸念した。以前に、サッカースペイン1部レアル・マドリードのメディカルアドバイザーを務めるニコ・ミヒッチ氏も「従来の禁止薬物の使用は短期的、長期的にも選手の健康に悪影響。必ず将来、健康に害が起きる」と医学的見地から問題視しており、スポーツ界の将来を揺るがす問題というわけだ。

 また、世界選手権の取材が15回目で国際的な陸上メディア「ランブログラン」の運営者ラリー・エダー氏(米国)は「これは薬物使用を祝福する大会だ。スポーツでドーピングは長年存在してきたが、『もう二度と競技ができない』と選手が思うほどの罰則無しでは今後も続くだろう。この大会はその弱点を利用している」と厳罰化を訴えた。

 同大会にはドナルド・トランプ米大統領の長男ジュニア氏や、米PayPal社共同創設者のピーター・ティール氏などが支援に名乗りを上げている。話題性を考慮すると今後も続々と支援が集まる可能性もあるが、バンブリック氏は「大会のスポンサーは手を引くべきだ」とスポンサーへの対応がカギを握ると分析。すでに世界陸連や世界水連は大会参加者に資格停止処分を科す方針を表明しているが、スポンサーへの罰則の有無なども今後の焦点になりうる。

 一方で、人類がどれだけ記録を更新できるか〝見たい〟という欲求が関心を集めているのも事実。スージー氏は「今大会の(男子棒高跳び)アルマンド・デュプランティスの記録を破る瞬間はとても興奮した。エンハンスト・ゲームズでも記録更新を見られるのは楽しいことかもしれないが、倫理的には問題があるので難しい」と興味と倫理のはざまで揺れる複雑な本音も語った。

 世界各地でさまざまな議論を呼ぶ大会は、スポーツ界に何をもたらすのだろうか。