50メートル5秒7の韋駄天が値千金の走りを披露した。広島は6日の西武戦(マツダ)で3―2と競り勝ち。チームのスピードスター・羽月隆太郎内野手(25)が「神走塁」で勝利の立役者となった。

 2―2で迎えた8回一死から代走で登場すると、西武2番手ウィンゲンターの投球モーションを完璧に攻略した。打席に立ったモンテロに対する初球で二盗。続く2球目に三盗も決める電光石火の足攻で好機を拡大させると、二死で迎えた佐々木への初球が捕逸となって本塁に労せず生還した。5回以降、膠着した試合をひとりで打開した神走塁に新井貴浩監督(48)も「素晴らしい走塁」と絶賛。本人もお立ち台では「最近、ネットで走塁下手とかたたかれているので、見返してやりました」と胸を張った。

 初見の投手相手にも臆することなくスタートを切れるのは、もちろん日々の準備の賜物だ。1メートル68センチ、73キロの小兵は「僕みたいな選手は、そういうところで成功して初めて一軍に置いてもらえる」。勝負所の代走を想定したイメージトレは、試合前のルーティンワーク。相手のベンチ入り全投手のけん制映像をチェックし「頭がどう動いたらとか、けん制は何回までとか、細かいところまで頭に入れて」出番に備える日々を重ねているという。

 そんな鯉の韋駄天男にも「あそこは正直、代走で走れた記憶がない」と打ち明ける〝難所〟がある。新井政権以降では「0盗塁」となっているヤクルトの本拠地・神宮球場だ。

〝難易度〟が上がる理由は、その出番に向けて体を慣らすウオーミングアップのスペースが限られている点にある。

 本拠地・マツダスタジアムのベンチ裏にはストレッチや10メートル程度の距離でダッシュが繰り返せる場所があり、他球場にも階段を上り降りできるような「自分で(出番に備え)心拍を上げておくスペースがある」(羽月)。

 だが、神宮球場については羽月が「壁に手をつき、ひたすら脚を上げ下げぐらいしか(できない)…」とため息をついている通り、完全に体を慣らすことが難しい環境下で〝一発勝負〟に臨まなければならない。

 それでも鯉のスピードスターは足のスペシャリストとして己の価値をさらに高めるべく、今季こそ神宮球場で盗塁を決め難所攻略を目指す心積もりだ。スチールの足跡を刻み込み〝全球場走破〟も狙う。