【橘高淳 審眼(61)】長い審判員生活の中で唯一、国際大会の審判員として派遣された大会がありました。2015年に開催された「第1回WBSCプレミア12」という舞台です。MLBが運営に携わるWBCとは違い、世界野球ソフトボール連盟(WBSC)が主催する大会で、私はこの大会で6試合に出場しました。
元ダイエー、ソフトバンク、巨人で活躍した小久保裕紀監督が率いたチームで、代表選手には日本ハム・大谷翔平選手の姿もありました。ただ、私は日本出身の審判員ですから侍ジャパンの試合をジャッジすることはできませんでした。
日本の審判は世界的に非常に高い評価を受け、台湾の台北に3人、台中に3人で計6人派遣されるNPB審判員は全て日本シリーズ経験者でそろえると言われ、非常に気合が入ったことを覚えています。
現在はNPBの審判員も国際試合の出場機会が増えました。以前から高い評価を受けているというのは、それ以前のアマチュア審判員の方々が長年にわたって築き上げられてきた優秀な技術のたまものだと思っています。台湾プロ野球リーグにはセ・リーグの先輩審判員たちが指導者として派遣されていた時代があったんです。だから、台湾の皆さんには大変よくしていただきました。
野球が盛んではないとされる国々の審判員の皆さんもしっかり訓練されています。プロリーグがあるメキシコなどの中南米諸国、台湾、韓国のアンパイアに至っては、MLBやNPBの審判員と遜色がないと言っていいでしょう。
日本代表チームはマナーがいいと思われている人は多いと思います。実際にそうなのですが、実はそうではないと捉えられていたこともありました。いつかのオリンピックの時だったでしょうか。日本ベンチから1球ごとへの監督、選手からの発声がすごいと感じた審判員がいました。選手を鼓舞するポジティブなものがほとんどでも、言葉が通じない国の審判員には何を言っているのか、誰に対しての発声なのかも分かりません。
あれは日本の恥だと言う審判員もいたほどで国際試合的にはマナーがよくない、判定に不利を及ぼすことがあるかもしれないと言われていたほどです。規則委員が戒めに行ったこともあったらしいです。
国際大会での審判員絡みのトラブルといえば、06年のWBC2次予選での日本―米国戦。西岡剛選手のタッチアップ問題を覚えている方は多いでしょう。MLB審判員のデービッドソンさんが離塁が早いとのアピールを認めてアウトとし、得点を取り消した判定です。実際、私は米国で会議があった際にご本人ともお会いしています。当時の映像も嫌というほど見ています。私も「ん?」とは思いましたよ。
ただ、審判目線では映像を見る限りですが、三塁走者が一瞬、沈んだ感じで走り出したのが分かるんです。それを離塁の瞬間だと思ってしまったのか…。それは分かりません。最後には日本が世界一になったことが事実です。
ちなみに国際大会でのコミュニケーションは全て英語です。通訳もついてくれます。パナマの審判員の方は面白かったですよ。日本の大手製薬会社が発売している、目がクゥーッとなる目薬があるじゃないですか。それをドラッグストアで買ってきて差し上げたところ、いたく気に入って仲間のお土産にしていましたね。












