茨城・日立市の市役所前の広場に6日午後1時ごろ乗用車が突っ込んでそのまま逃走し、同日午後1時半ごろには、約15キロ南の同県東海村役場の正面玄関にも別の車が突っ込んだ事件で、県警は建造物損壊容疑で日立市の自称運転手の益子泰容疑者(53)を逮捕した。「東海村と日立市に恨みがあった」と話しているというが、年の瀬の凶行背景は――。

 市役所前の車と村役場に突入した車は別の色で、ともに益子容疑者の親族名義で、乗り換えた可能性が高い。市役所の際には同乗者がいたとの情報もある。一連の暴走で、20~40代の男女3人が負傷し、いずれも意識はあるという。同容疑者は村役場に突入した後、病院に搬送されたが、意識はあって命に別条はないという。

 日立市役所前広場では障害者関連のイベントが行われていたことから、憎悪犯罪の可能性もあった。また、短時間に2か所に車で突っ込んだことから、強烈な怒りをため込んだスプリーキラー的な犯罪者の可能性もあった。

 元警察関係者は「行政への恨みを語っているので『行政対象暴力』ではないか。生活保護を申請しても通らなかった、税金や水道料金などでトラブルになったなどとして、暴力、暴言など威圧的な行動で不当要求を通そうとすることです。かつては暴力団の常套手段でしたが、暴対法で減少し、一般市民による不当要求が増加しています。一般市民の行政対象暴力の場合、窓口の態度が悪かったという小さな理由も出ています」と指摘する。

 2018年、石川・金沢市役所で職員を刺した刃物男は生活保護を打ち切られたとして、「市の職員なら誰でもよかった」と供述。20年には「コロナ給付金がもらえないなら死ぬ」として、千葉・松戸市役所に押し入った刃物男を逮捕。21年には熊本・荒尾市役所で「子供の奨学金が打ち切られた。対応に腹が立った」として刃物女が逮捕された。今年も役所での刃物事件が相次いだ。

「行政対象暴力が増えているのは、経済的に困窮している市民が増えているということがあります。某市は民間の平均年収が200万円台なのに、市役所は600万円といわれています。車も家も民間と公務員ではまったく違うのです。市民の怒りが暴言や暴力として役所に向いてしまっていると思われます」(同)

 かつては電話や窓口でのクレームだったのが、居座り、暴行、刃物持ち込みなどエスカレートしている。今回の動機の詳細はまだ分かっていないが、2回も車で突入とはとんでもないエスカレートぶりだ。