【ニュースシネマパラダイス】どうも! 有村昆です。ユーチューバーが「私人逮捕」と称して、痴漢や盗撮犯を取り押さえる動画が注目を集め、物議を醸しています。動画として人気を集める一方で「やり過ぎでは?」といった声もあります。僕もニュースで知り、動画を見てみたのですが、ついつい見入ってしまいました。

 犯人を取り押さえる瞬間は緊迫感があり、見る者は次から次へと刺激的な動画を求める。対してユーチューバーは、それに応えようとする。これがどんどんエスカレートしていくと、やはり危険ですよね。ユーチューバーに限らず、SNSを利用するようになり「いいね!」が気になり、常に人の評価を気にする人が増えたように思います。

 そこで今回は強烈な承認欲求に取りつかれた女性を描いた、現在公開中の映画「シック・オブ・マイセルフ」(2023年)を紹介します。主人公のシグネは自分が何をやりたいのかがよく分かっておらず、人生に迷ってしまいます。彼氏のトーマスと同棲しているんですが、トーマスがアーティストとして脚光を浴びるようになると激しい嫉妬心と焦燥感を抱くようになります。

 そんな時、シグネはロシア製の薬の副作用で皮膚疾患が起きた記事を目にします。その薬を大量購入し、服用したシグネは皮膚疾患が起き、トーマスの気を引くことに成功しました。さらにメディアに自分の病気を公表し、世間の注目を集めたことで快感を覚えます。シグネは承認欲求をどんどんエスカレートさせ、薬を服用し続けます。暴走する承認欲求の結末は…。ぜひ劇場でご覧ください。

 本作はブラックコメディーなんですが、後半は笑えない展開になります。「認められたい」「評価されたい」という欲求は誰しもあり、多かれ少なかれあなたの心にも「シグネ」は存在するのではないでしょうか。SNSの「いいね!」の数、ユーチューブ、TikTokの再生回数のように明確に数値化されるので、より人の評価が気になるようになったと思います。前回以上のことをやらないと人が認めてくれないんじゃないかという感覚に陥り、表現をエスカレートさせていく。

 僕自身もTikTokでホラー映画や殺人映画を紹介すると再生回数が回るんですよ。明るい映画や楽しい映画もいっぱいあるのに再生回数を意識してダークな作品を紹介する自分がいたりする。ニーズに応えることも重要ですが、そこにすごくジレンマを感じる時があります。人の評価ばかりを気にして自分を見失っては本末転倒ですよね。そういう意味でも本作はSNS社会の今を鋭く描いた1本だと思います。