メキシコ議会で先週、UFO公聴会が開催され、「宇宙人のミイラ」が披露され、世界中で大きな話題となった。お堅いはずの公聴会が宇宙人のミイラの登場でオカルトじみたものになってしまったが、UFOファンは大喜びだ。肝心の「宇宙人のミイラ」の真贋はどうなっているのか。
メキシコ議会で12日、開催されたのは「メキシコ議会の未確認異常現象規制公聴会」という真面目なもので、4時間近く行われた。米海軍元パイロットのライアン・グレーブス氏、UFO問題に取り組んでいる日本維新の会の浅川義治衆院議員らも出席した。
メキシコを代表するUFO研究家ハイメ・マウサン氏が公聴会の開催に尽力し、サプライズ的に披露したのが宇宙人のミイラだった。
ミイラは2体。マウサン氏は「宇宙人の明らかな証拠」であると説明した。2017年にペルーのクスコで発見されたもので、身長60センチで、両手に3本の指しかなく、映画「E.T.」のように細長い首と丸い頭を持つ。約1000年前のもので、X線検査によって、遺体の胎内に謎の卵があることが判明したという。
マウサン氏は「これらは墜落した船から回収された生物ではなく、珪藻鉱山から掘り出された生物なのです」と述べ、「宇宙人の証拠」だとした。
ミイラはメキシコ国立自治大学(UNAM)によって、年代特定され、メキシコ海軍の保健科学研究所所長ホセ・デ・ヘスス・ザルセ・ベニテス氏は補足して、厳正なX線検査とDNA分析が行われたとして、「これらの遺体は人間ではないと断言できます」と付け加えた。まるでUNAMが“お墨付き”を与えたかのようだ。
しかし、UNAMの地球物理学研究所は13日、「行った研究作業は遺体の年代を測定しただけである。いかなる場合においても、われわれは約0・5グラムの皮膚と脳組織のサンプルの起源について結論を下すことはない」と発表した。人間かどうかのDNA検査を行っておらず、年代測定だけしたと強調し、ミイラ騒動から距離を置いた形だ。
UFO研究家の竹本良氏は「メキシコの矢追純一さんことマウサン氏のことは宇宙人探求者として評価をしていました。だけど、なぜかマウサン氏が絡むといつもウヤムヤになるのです」と語る。
公聴会で17人の講演者のうち14人までが真面目な講演を行った。8人目の浅川氏は場を和ませながら、自分の体験や日本のUAP(UFOを含む未確認空中現象)への対応を真剣に述べたが、「14人は前座扱いです。一番後に出てきた演者3人による宇宙人の公開が華。つまりこの最後を盛り上げるように、あらかじめ演出され、構成されていることが一目瞭然でした」(竹本氏)。浅川氏も宇宙人のミイラの盛り上げ役をさせられたとすれば、反発も仕方ないだろう。
「宇宙人ミイラ」の公開後、ペルーのレスリー・ウルテアガ文化相は「ヒスパニック以前(古代アンデス文明)の物体をペルーから持ち出した人々に対し、ペルー文化省は刑事告訴している。ペルーからどのように出たかを調査中である」と述べた。
これにマウサン氏は「私は違法なことは一切行っていない。ただし、ミイラがどのようにしてメキシコに到着したかは答えられない。どのように手元に届いたのかは適切な時期に明らかにする」と話したが、ペルーなどから盗掘されたミイラを含む文化財がメキシコのブラックマーケットで売買されていることは以前から問題になっていた。
なお、本紙は今年8月にこの「宇宙人のミイラ」とほぼ同じタイプのミイラを紙面で公開した。ミイラは50体ほど発掘され、散り散りになっている現状を取材しており、今回登場したのもその一つなのか――。