なぜ、ここまで「ズレ」が生じるのか。エンゼルスの大谷翔平投手(29)が17日(日本時間18日)の本拠地タイガース戦でベンチに姿を現した。チームは延長10回の末に4―5で競り負けたが、試合中の大谷はサンドバルら同僚と時折笑みを浮かべながら〝友好モード〟で観戦した。
前日15日のタイガース戦前にはクラブハウス内にある自身のロッカーを整理。野球道具一式を持ち帰ってから一夜明け、この日は球団側から15日間のIL(負傷者リスト)入りが発表されていた。さらにその後、ミナシアンGMが会見で大谷が近日中に右肘靭帯の手術を受ける見通しを明らかにし「医師とも相談して今シーズンのプレーは中止することになった」と明言。このまま大谷はチームを離れ、現時点で術式は不透明ながらも何らかの形で受ける右肘靭帯の修復手術に備えるとの見方が強まっていた。
ところが大谷はこの日のタイガース戦前、エンゼル・スタジアムに姿を見せ、試合ではユニホームを着用して〝ベンチ入り〟。加えて試合前にはネビン監督が大谷本人から残り試合のホームゲームに極力帯同したいと申し出があったことを明かした。2度目のトミー・ジョン手術となるかは分からないとはいえ、どんな術式であれ右ヒジ手術に踏み切ればリハビリ面なども考慮し、通常のケースならチーム帯同は極めて困難だ。
エンゼルスと同じア・リーグ球団に属するMLB関係者は「それならば一体なぜ、ミナシアンGMは会見でオオタニに関し『彼はすぐに右ヒジに関して手術も含めた医療処置を受ける決断を下し、ロッカーの荷物を自らまとめ始めた』と言い切ったのか。そして、どうして相反するようにネビン監督がオオタニの残り試合でのチーム帯同願望を公の場でわざわざ〝アピール〟したのか。このフロントと現場の矛盾からあらためて1つ浮き彫りになったのは、エンゼルスの指揮系統が完全に崩壊しているという点だ。こんな乖離(かいり)は我々の球団では絶対にあり得ない」と断じた。
そうなると、そもそも大谷がミナシアンGMの言葉通り、本当に「近日中の右ヒジ手術」を受けるのかという疑問すら生じてくる。MLB他球団の間から「やはりエンゼルスはオオタニ本人、そして代理人のネズ・バレロ氏側と深いコミュニケーションが取れていないのではないか。両者の間にミゾが深まっている何よりの証拠だろう」との指摘が向けられるのも無理はない。
いずれにせよ、大谷がロッカー整理を行ったままチームメートにあいさつすることなく、今季終了を迎えるという「寂しいフィナーレ」となる流れだけは何とか回避されたが…。ただ今オフにFAとなって他球団への移籍が濃厚視されている現状に何ら変わりはない。そしてIL入りして残り試合に出場しない以上、仮に今オフの移籍が現実化すれば9月3日の敵地アスレチックス戦がエンゼルスでのラストゲームになる。8月23日のレッズ戦が本拠地エンゼル・スタジアムでの「ホームラストプレー」となる可能性も高い。
大谷を巡る「さらば、エンゼルス」のムードは高まる一方だ。