目には光るモノがあった。飛び込みの日本選手権2日目(2日、日環アリーナ栃木)、女子高飛び込み決勝が行われ、金戸凜(20=セントラルスポーツ)が330・65点で優勝。パリ五輪予選となる世界選手権(来年2月、カタール・ドーハ)の代表入りが確実となった。

 どん底からはい上がり、頂点の座を勝ち取った。「この11か月間本当にしんどくて、自分が出れない試合とかをじっと座って見ていると『どうしてケガしちゃったんだろう』とか思っていた」。昨年9月末に左ヒザ後十字靱帯断裂などの大ケガを負い、すぐさま手術を敢行。長期にわたるリハビリは想像を絶するつらさだったものの、周囲の支えが力になった。

「1人で競技をやっているんじゃないというのは日々実感している。リハビリのトレーナーさんとか、トレーニングのトレーナーさんとか、病院の先生とか、家族とかコーチとか、チームメートとか、いろんな人の支えがないとここまで来られなかった」

 プールに帰ってくるとコーチたちから「よく戻ってきたね」「ヒザはどう?」など、多くの言葉を掛けられた。「自分の居場所はここなんだな」。再び日本一を争う舞台に帰ってきた金戸は、100%ではない状態でもきっちり演技をまとめた。最終結果を確認すると、自然と涙があふれ、両手で顔をおおった。

 祖父母、両親はともにオリンピアン。飛び込み一家で育った金戸に対し、かねて3代での五輪出場を期待する声も上がっていた。「昔は取材で親のことを聞かれるので、正直受けるのが嫌だった」というが、東京五輪切符を逃した中で心境が変化した。「今は親のおかげで注目されるということは分かるので、嫌ではない」と力を込めた。

 プレッシャーがないと言えばウソになる。それでも、金戸は腹をくくっている。「今回もラストチャンスと思ってやるしかないという思いで挑んだ。もし世界選手権の代表に選んでいただけたら、またラストチャンスになると思うので、もっともっと自分の演技を高めていけたら」。視線の先にあるのはパリ切符のみだ。