終わりの始まりなのか。ウクライナに侵攻しているロシアで内紛が起きた。ロシアの民間軍事会社「ワグネル」率いる〝プーチンの料理人〟ことエフゲニー・プリゴジン氏が、プーチン体制に対して武装反乱。モスクワに向け進軍していたが、ベラルーシのルカシェンコ大統領の仲介でワグネルとロシア軍の衝突は避けられることとなった。反乱を巡り、プーチン大統領の弱体化が指摘されているが…。

 プリゴジン氏はウクライナ侵攻に参加するワグネル部隊をロシア軍が攻撃したと不満を表明。「正義の行進」と主張し、一時支配下に置いた南部軍管区司令部からモスクワに向かって24日に進軍していた。

 通信アプリなどを使って持論を展開。「彼ら(ロシア軍指導部)は兵士の命を軽視し、正義という言葉を忘れた。われわれは正義を取り戻す。何万人ものロシアの兵士を殺した者は罰せられるだろう」とロシア軍指導部を批判。また、プーチン大統領がワグネルについて「裏切り」と指摘したことには「大統領は大きな間違いを犯した。われわれは皆、愛国者だ」と訴えた。

 プリゴジン氏の動きを受けて、ロシア連邦保安局(FSB)はプリゴジン氏の捜査を開始。モスクワでは対テロ作戦態勢が宣言されるなど、緊張感が高まっていた。

 しかし、一夜にして事態は急変。突如プリゴジン氏は撤収命令を出し、ベラルーシに〝亡命〟。ロシア側も捜査を取り下げ、ワグネル戦闘員の刑事責任も問われないという。ルカシェンコ大統領とプーチン氏の間で電話会談があり、その後、ルカシェンコ氏とプリゴジン氏で協議し、撤退となったという。

「ワグネル」を率いるプリゴジン氏(ロイター)
「ワグネル」を率いるプリゴジン氏(ロイター)

 これで進軍前に元通り…とはならなそう。英紙サンでは〝プーチン最大の敵〟と呼ばれる投資家のビル・ブラウダー氏が「始まりにすぎない」とさらなる混乱を予告。「プーチン大統領はプリゴジン氏をこれまでにも殺害しようとしてきたが、おそらく再び試みるであろう。そのことをプリゴジン氏も理解している。今は誰も信用していないと思う」と暗殺の陰謀が始まっていると指摘した。

 また「これまで見たことがないような大規模な粛清が起きるだろう。プーチン大統領は政敵で刑務所を埋めるはずだ。何も終わってません。始まったばかりです」と付け加えた。

 プーチン体制は弱体化していくのか。軍事ジャーナリストの鍛冶俊樹氏は「プーチン氏の権力が弱まればロシアの分裂もあり得ると想定していましたが、今回の件で分裂は遠のいたでしょう。むしろプーチン体制は強化されます」と話した。

 それは一体どういうことなのか。反乱を起こされるほど弱まっていたのではないのか。「結局、プリゴジン氏の反乱は鎮圧されてしまった。プーチン氏がわずか1日で返り討ちにしたという見方もできるのです。第2次世界大戦ではヒトラー暗殺未遂事件がありました。暗殺に失敗したことで反ヒトラー派は粛清され、ヒトラーの権力がかえって高まりました。その歴史を踏まえるとプーチン氏は不満分子の粛清を始め、独裁権力がむしろ強くなるでしょう」(同)

 まだ終わりは見えてこない。