第5回WBC1次ラウンドB組の侍ジャパンは、10日の韓国戦(東京ドーム)に臨み、13―4で圧勝。3点を先制されたもののすぐさま引っくり返し、2連勝を飾った。注目の大谷翔平投手(28=エンゼルス)は「3番・DH」で先発出場し、6回にダメ押しの8点目となる適時打を放つなど3打数2安打1打点。この日も複数安打の活躍で勝利に大きく貢献した日本の二刀流男に、韓国側は〝完全降伏〟だった。

 力の差をまざまざと見せつけた。3点を先制された直後の3回だ。ヌートバーと近藤の連続適時打で2点を返し、1点差に詰め寄ると、大谷が申告敬遠で歩かされて無死満塁。村上は遊飛に倒れたものの続く吉田が逆転の2点適時打を放って、流れを手繰り寄せた。

 その後も侍打線の豪打が爆発した。大谷も6回無死満塁の第4打席で痛烈な打球を右前へ弾き返し、チームに8点目をもたらすなど、3打数2安打1打点2四球。終わってみればチームは13安打13得点を奪い、韓国を完ぷなきまでに叩きのめす格好となった。

 試合後の栗山監督は「最終的には点が開いたようにも見えるが、昨日(初戦の中国戦)と一緒でどっちにでも転ぶゲーム。本当に一つひとつしっかりやって、勝ち切れたので良かったなと思う」と謙そんしながらコメント。一方、会見の場に現れた韓国のイ・ガンチョル監督は「全体的に非常に苦しい展開だった」と敗戦の弁を述べながらも、日韓対決で大敗を喫したことには「日本が非常によくやったということは認める。しかしながら、韓国選手の力はこれが終わりではない。もっと成長すれば十分いい試合ができる」と強がった。

 それでも大谷の話題になると、その威勢の良さはすっかりトーンダウン。3回に1点差へと詰め寄られ、なおも無死二、三塁の場面で大谷を敬遠した理由について問われると「あの状況で大谷に大きい一発が出ると危ないと思った。次の打者(村上)はあまりコンディションが良くなかったこともあったので」と説明。日本打線の中で大谷を最大限に警戒していたことを認め、顔をしかめた。

危険な内角球を、驚異の身体能力でよける大谷
危険な内角球を、驚異の身体能力でよける大谷

 敵将が口にしたように、実は試合前から韓国側は大谷について〝完全降伏〟といった声が多かった。東京ラウンドの取材に訪れている韓国メディア関係者の1人は「オオタニの攻略? とんでもない。抑えられるわけがないですよ。代表メンバーの多くがオオタニの試合前のフリー打撃を見てぼう然としていたぐらいですから」と即答。韓国国内では今大会での日韓戦が「宿命の対決」として大いに煽られていながらも、大半の同国代表関係者や同国メディアは、戦前から大谷が代表入りした日本には「かなわないのではないか」と見ていたという。

 その上で前出の関係者は「韓国の代表チームはオオタニのすべてを見習う必要性があります。なぜ『ツー・ウエー・プレーヤー(二刀流)』として成功を収めているのか。なぜ、あのような素晴らしい人間性を保ちながら真摯に野球に取り組めるのか…」と続けると、こんな〝仰天ラブコール〟も送った。 

「難しいプランだとは思いますが、韓国球界としてはオオタニを〝レンタル〟したいです。彼が何らかの形で韓国球界に携わってもらえれば、そのすべてを学ぶ機会が得られます。オオタニは東アジアの『宝』なのですから」

 要は大谷がMLBを経て将来的に韓国プロ野球(KBO)へ移籍するなどして、二刀流エッセンスや誠実な人間性を同国に植えつけてほしいということ。そんな可能性は、まずないだろうが。

 それにしても、韓国はこれほどまでに大谷を「特別視」していたのか。戦う前から勝負はついていたのかもしれない。