福岡県筑紫野市の老舗旅館「二日市温泉 大丸別荘」が、条例で定められた週1回以上必要な浴場の湯の交換を年に2回しかせず、基準値の3700倍に当たるレジオネラ菌が検出された問題で、運営会社の山田真社長が28日、謝罪会見を行った。しかし、会見では謝罪文を棒読みし、事の深刻さが伝わらない発言を連発。一部では「令和の船場吉兆」と揶揄する声も上がっている。
謝罪会見を行った山田社長は、「湯を換えなくていいと従業員に言った」「私の指示で塩素濃度を改ざんした。法令違反の認識はあった」と認めて謝罪。一方で、条例で定められた湯の交換をせず、塩素濃度の改ざんも行った理由は「源泉かけ流しでお湯が入れ替わってるから大丈夫だと思った。塩素注入しなかったのは自分の体質に合わなかったから」と、身勝手な理由を挙げて釈明した。
今回の問題は同宿の宿泊者がレジオネラ症を発症したことで保健所が抜き打ち検査して発覚している。基準値の3700倍という値が検出されたことには「レジオネラ菌はそのへんの池や水たまりにいくらでもいるという知識で、怖いという認識はなかった」と認識不足を露呈。その上で「塩素を入れておけば簡単に解決する問題なんですよ」といった軽い発言まで飛び出していた。
しかも、山田社長が謝罪の文面を棒読みするようなシーンもあったため、ワイドショーやSNSで批判が殺到した。TBS系の情報番組「ゴゴスマ~GOGO! Smile~」に出演した鈴木紗理奈は「何で記者会見したんでしょうね?」「こういう人が温泉施設を運営すべきじゃない」などと一喝。SNSでは2007年に食品偽装問題で謝罪会見を行い、〝ささやき女将〟で有名になった有名料亭を持ち出して「令和の船場吉兆」と揶揄する声まで噴出した。
いったい、どうしてこんなダメダメ会見になってしまったのか? スピーチライターの蔭山洋介氏は、「謝罪会見をするのに事実関係を整理できていなかったのが致命的。それを整理してないから、ツッコまれてボロが出る。結果、条例通り運営していたのかとの質問に『確認できない。だいたいやっていたと思う』という恐ろしい回答をしてしまっていた」と、専門家不在の謝罪会見の問題点を指摘した。
問題はこれだけではない。山田社長は謝罪会見中、何度も「源泉かけ流しでお湯が入れ替わってるから大丈夫だと思った」「レジオネラ菌に怖いという認識はなかった」という主旨の発言を繰り返している。
「伝えるべきは謝罪と以後気をつけますという2点。それがこの謝罪会見での最大のテーマだったはず。それなのに山田社長は『僕』の気持ちを話すことに固執してしまった。それでは言い訳と捉えられて心証が悪くなるだけです」(同)
福岡県の条例では1週間に1回以上、完全換水を行うことと定められており、いくら源泉かけ流しだったと言ったところで条例違反は覆らない。また、過去に何人もの人がレジオネラ症を発症して死亡しているのは温泉施設運営者の間では常識だ。認識不足だったといくら主張したところで許されるものではない。
現在はSNS全盛時代。ちょっとしたことで拡散し、あっという間に経営破綻につながることもあり得る。気を付けなければならない。