〝女芸人マニア〟として知られているお笑いコンビ「馬鹿よ貴方は」の新道竜巳が、これから〝馬鹿売れ〟しそうな女芸人を紹介するこの連載。今回は、すでに〝馬鹿売れ〟しているが、昨年末からお笑い界の話題を独占しているレジェンド女芸人を〝特別編〟として紹介する――。

 この連載は、これからブレークする女芸人を紹介するという趣旨なので、本来なら取り上げるべき人ではないはずなんです。〝レジェンド〟と言っても過言ではないほどのビッグネームですが、この方への注目度は昨年暮れから上がる一方なので、今回は〝特別編〟ということで取り上げさせていただきました。

【プロフィル】
 名前:山田邦子
 生年月日:1960年6月13日
 所属:アスリート・マーケティング株式会社

 実績は、今さら言うまでもありません。デビューした1981年にフジテレビの「オレたちひょうきん族」に出演し、とんでもなく売れて太田プロダクションに所属しました。事務所に入ってから売れたのではなく、売れてから事務所に入ったサラブレッドです。

 その後、「邦ちゃんのやまだかつてないテレビ」(フジ系)、「邦子がタッチ」(テレビ朝日系)などの冠番組を持つほどの大活躍。当時行われていたNHKの「好きなタレント調査」では88年から95年まで、8年連続で女性部門の1位に輝きました。

 そんな邦子さんがあらためて注目されたのが、昨年の漫才日本一決定戦「M―1グランプリ2022」です。一昨年まで決勝の審査員を務めた上沼恵美子さん、オール巨人さんが抜け、誰になるのか注目されていました。「女性は1人、必ず入るんじゃないの?」と予想されていましたが、それでも邦子さんを予想する声はほとんどありませんでした。

 お笑いファンの間で名前が挙がったのはハイヒール・リンゴさん、海原やすよ・ともこさん、清水ミチコさん、野々村友紀子さん、久本雅美さんなどなど。ただ、いざ邦子さんと発表されると、不満よりも納得の声の方が多かった。「その人がいたか!」と思わせるほど実績十分。これまでで一番売れた女芸人と言っても過言ではないでしょう。

 実際にM―1決勝当日も、予想を超える行動を見せてくれました。本番前には自身のユーチューブチャンネルで生配信を行うという、斬新なことを平然とやってのけた。今まで本番直前に生配信をするなんて、審査員はもちろん、出演者もいませんでした。

 しかもこの生配信が面白すぎた! 共演者が邦子さんの楽屋にあいさつに来るところなんて、これまで表に出たことはないでしょう。しかもあいさつに来る人が豪華すぎる。まず上戸彩さん。姿は映ってませんでしたが、声はしっかり聞こえる。

 そして次にあいさつに来られたのは松本人志さん。「松本さんがあいさつに行くことなんてあるの?」と思ってしまいますが、実は松本さんより邦子さんの方がデビューは1年早く、先輩になるので当然と言えば当然でしょう。

 その後も博多大吉さん、中川家・礼二さん、サンドウィッチマン・富澤たけしさん、ナイツ・塙宣之さんなどがあいさつに訪れます。邦子さんはさらにM―1の台本の紹介するなど、お笑いファンだけでなく、みんなが興味を持ちそうな動画を見せてくれました。

 本番が始まっても、話題の中心はある意味で邦子さんでした。松本さんに「だいたいあなたがね、私のこと、しんどい先輩とか言うから」と文句を言ったり、1組目のカベポスターに84点という低い点を付け、話題をさらいました。

 さらに本番が終わっても邦子さんは止まりません。次の仕事に向かう車の中で、またまた生配信を始めたのです。邦子さんにとっては真空ジェシカが一番良かったという感想や、着物を着ていたから席に座る時、大吉さんがイスを引くなど気を遣ってくれたことなど、他の審査員への感謝を述べていました。

 邦子さんはその後、ユーチューブだけじゃなくいろんなメディアでM―1のことを語っています。すでに「オファーがあれば今年もやる」と明言されていますが、審査員を1回やっただけなのに、もはや欠かせない存在に思えてくる。そんな邦子さんにますます注目が集まるのは間違いないでしょう。

 ☆しんどう・たつみ 1977年4月15日生まれ、千葉県出身、本名・濱島英治郎。平井“ファラオ”光と組む「馬鹿よ貴方は」として「THE MANZAI」「M―1グランプリ」で決勝進出を果たした実力派。緻密なネタ作りに定評がある一方、女芸人ナンバーワン決定戦「THE W」では、予選会場に足しげく通い、ほとんどの出場者のネタを見るほどの“女芸人マニア”。