オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第122回は「時空のおっさん」だ。

 ここ10年ぐらい、異次元の世界に迷い込む人々が増えている。その人たちに共通するのは、知らず知らずのうちに不可抗力で異次元=異世界にトリップもしくはワープしたということだ。以前はまれな例だったが、体験談が増え、“異世界体験”という分野が確立されつつある。

 異世界とはパラレルワールドのことだ。地球と全く同じ条件だが、少しだけ違っている世界。例えば、知らない芸能人が雑誌の表紙になっていたり、日本語が読めない文字になっていたりする。パラレルワールドとは、もう一つの地球が存在するという考え方である。物理学の世界で11次元まで存在することが確実とされ、一般的になったからだと推測できる。

 その迷い込んだ被害者を助けだすのが「時空のおっさん」の役割である。たいていは作業着で現れる。他にも「時空のお姉さん」「時空のおばさん」「時空のお兄さん」などが確認されており、複数人による組織と思われる。

 紛れ込んだ一般人を見つけた時、必ず携帯電話でどこかと連絡を取り合っている。その言葉遣いから、上司にあたる人と話しているように推測される。被害者を取り押さえる時は複数人で押さえつけることがある。警察官のような役割をする人間も紛れ込んでいる。これらは、正しい時空間を守るための警備・警察のような組織かもしれない。

 被害者に対しては、最初は高圧的な態度を取ったり、乱暴な言葉を使ったりするが、時間がたつとフレンドリーな態度に変化していく。そして、本人が気づかぬうちに被害者をもともと存在していた時空間に戻してくれるのだ。彼らは果たして人間であろうか? それとも異次元の存在であろうか。