学校法人「森友学園」の国有地売却問題を担当していた元財務省近畿財務局職員・赤木俊夫さん(54=当時)が、佐川宣寿元国税庁長官(65)の指示で決裁文書改ざんを強制され自殺に追い込まれたとして、妻の雅子さん(51)が佐川氏に1650万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁(中尾彰裁判長)は25日、請求を棄却した。

 改ざんをめぐっては、大阪地検特捜部が佐川氏らを不起訴処分としたが、雅子さんは「夫の死の真相を知りたい」として、国と佐川氏を相手に民事提訴。しかし、国との裁判は昨年12月、国側が突然、原告の請求を全面的に認める「認諾」をし、終結した。

 残すは佐川氏との裁判となっていたが、中尾裁判長は「国に対して国家賠償法1条1項に基づいて損害賠償責任を追及することができ、被告は責任を負わない。認諾もされている。道義上はともかく、説明や謝罪をすべき法的義務は発生しない」として、雅子さん側の請求を棄却。国家賠償請求における違法行為を行った公務員の個人責任を否定した最高裁判例の壁に阻まれた。

 雅子さんは中尾裁判長の発言の後、「ありがとうございました」と一礼。真実は明らかにならず、俊夫さんのマフラーを巻いて応じた報道陣の取材にも「残念でならない」と悔しさをにじませたが、裁判官には敬意を表した。

 一方で、一度も出廷しなかった佐川氏に対しては「せめて一緒に判決を聞いてほしかった」と無念の思いを吐露。「国民が納得できるまで説明を続ける」と言いながら、認諾を了承した岸田文雄首相に対しても「今からでも再調査してほしい。説明が必要だと言ってくれた以上、きちんと夫に向き合ってもらいたい」と切実に訴えた。

 関係者は「民事訴訟は最後の最後の手段であって、そこに多くを求めるのは酷。そもそも、これだけ証拠が揃っているのだから、特捜がきちんとやるべきだった。ただ、特捜の現場は頑張っていただけに、当時の黒川弘務東京高検検事長から何らかの圧力があったのだろう」と語った。雅子さん側は控訴する方針だ。