酒と健康に関する著書で知られ、数多くの医師を取材している酒ジャーナリストの葉石かおり氏が、自分も大好きな酒を元気に飲み続けるためのコツを探ります。

 

 ぐでんぐでんに酔っぱらって、じん帯を伸ばしたり、新橋で警察官にからんでみたり。若かりし頃の私は、それはもうひどい酔っ払いだった。今でこそ「酒ジャーナリスト」という肩書でスカしたフリをしているが、ベースは「NO SAKE NO MY LIFE」が信条の単なる酒好きである。

 その頃から信じてやまなかったことわざは、「酒は百薬の長」。「ほどほどの酒は、どんな良薬よりも効果がある」という酒飲みにとっては、まさに免罪符のようなありがたいお言葉である。私自身、このことわざがあったからこそ、「ほどほど」の量は優に超えても、「お酒を飲んだほうがカラダにいいんだもーん」と自分に言い聞かせることができた。

「ほどほどのお酒はカラダにいい」という説が広まった背景には、飲酒量と死亡リスクの関係を表した、通称「Jカーブ」と呼ばれるグラフがある。これは酒をまったく飲まない人よりも、1日あたり純アルコール量に換算し、10~19g(女性は9gまで)を飲む人のほうが、死亡リスクが低くなるというものだ。

 しかし、しかしである。長年信じられてきた「少量の酒はカラダにいい」という説が、思い切り覆される論文が世界的権威のある医学雑誌「Lancet」で発表された(2018年)のだ。気になる結論は、「まったく飲まないことが健康に最もよい」という、酒飲みにとっては残酷なものだった。この論文は1990年から2016年に渡って、195の国と地域における飲酒量と、飲酒に起因する死亡リスクの関係性を分析したもの。論文のグラフを見ると、緩やかに右肩上がりになっており、「飲酒量が増えれば、病気や死亡リスクが上がる」ことを物語っている。

 ショック……、と思っても、飲むのを止められないのが酒飲みの性。大事なのは、「事実を受け止め、酒のリスクを認識する」こと。酒のリスクを認識するのと、しないのとでは、飲み方に大きな違いが出る。リスクを認識さえしていれば、自然と量をセーブするようになる。事実、私自身がそうだった。年に数回やらかすこともあるが、週4~5日の休肝日は厳守。普段は泥酔するまで飲むことはそうない(知らんけど)。

 かつては刹那的に、一升酒を欲望のまま飲んできた私だが、仕事で酒のリスクを認識して以来、明らかに飲み方が変わった。一生健康で酒を飲むためにも、まずは手始めに「酒は百薬の長」は幻だったという事実をお伝えしておきたい。

 ※純アルコール量とはアルコール飲料に含まれるアルコールの量。酒の量(ml)×度数/100×0・8=純アルコール量(g)。