評価は青天井の勢いだ。オリックス・山本由伸投手(24)が「日本最高の投手」としてMLBから〝ロックオン〟されている。ポスティングシステムによる2023年オフのメジャー移籍説もささやかれる中、水面下ではヤンキースを筆頭に10球団以上が将来的な獲得を視野に入れ、本格調査へ乗り出している。来年3月の第5回WBCはメジャーリーガーと対峙する「ヨシノブ・ヤマモト」の見本市となる。

 今季の山本は15勝5敗、防御率1・68と文句なしの成績をマーク。昨季も勝利(18)、防御率(1・39)、奪三振(206)、勝率(7割8分3厘)、完封(4)の〝五冠〟を獲得してチームをリーグ優勝へ導き、2年連続での個人タイトルラッシュは確実だ。

 そんな山本にMLBの複数球団は水面下で早々と〝つばつけ〟を行っている。山本に関しては「インターナショナルFA」(25歳以上で外国リーグ在籍6年)の資格を満たす23年オフに「オリックスは本人の強いMLB移籍希望に折れ、そのタイミングでポスティング移籍を容認するのではないか」とささやかれているからだ。

 ア・リーグ球団の極東スカウトは「山本に対して獲得に最も前のめりになっているのは現時点でヤンキースだ」と打ち明け、こう述べる。

「ヤンキースは、かつてチームに7年間在籍し、78勝をマークした田中将大(現楽天)を超える可能性がある存在として彼に高い評価を与えている。オリックスからポスティング移籍にゴーサインが出されれば、ほぼ間違いなく獲得に名乗りを上げることになる。ヤンキースの本気度を考えれば、彼らが2013年オフに田中将大と7年総額1億5500万ドルで締結した契約内容を超えるサラリーを山本側に提示することになる」

 もちろんヤンキースだけではない。前出のスカウトは「我々の球団も含め、現時点で少なくとも10球団以上がヤマモトの獲得に手を挙げることになる」とも分析している。

「コマンド(制球力)も素晴らしく、速球やカッター、スプリッター、カーブを自在に操りながら打者を圧倒する技術は『10年に1人』のレベル。球速、球威も加え、彼はトータルバランスが素晴らしい。スカウティングリポートの各項目はどれも『Aプラス』で最高値だ。何より特筆すべきは、山本にはまだまだ成長が見込めるところ」(前出のスカウト)

 一方、MLB中継で解説者を務める本紙評論家の前田幸長氏も「山本はいい意味で〝手の抜き方〟を覚え始めてきました。つまり全力で抑えにかからなくても、抑えられる打者に対しては力を抜く。これはベテランの投手が身につけていく術なのですが、彼は24歳の若さでそれを身につけている。本当にとんでもない投手ですよ」と潜在能力の高さに脱帽している。

 最後に前出のスカウトは「来年のWBC、侍ジャパンには投手で言えば佐々木朗(ロッテ)よりも、山本に最も注目が集まることになるでしょう。各国代表に参加するメジャーリーガーとの対戦で、山本がどこまでの力を発揮できるか。その力量チェックの場になりますからね」との言葉で締めた。

 史上初の2年連続となる沢村賞受賞もほぼ確実とみられる山本。しばらく日米で話題を独占することになりそうだ。