陸上男子短距離の桐生祥秀(26=日本生命)は、まだまだ夢をあきらめていない。
6月に「陸上人生でこれから何がやりたいのかしっかりと考える時間をつくることにしました」と休養を明言していた桐生だが、29日に自身のユーチューブチャンネルを更新。10月から活動を再開と発表した上で、休養の経緯について「9秒台のプレッシャーと病気」があったと告白した。
2017年に日本人初の9秒台(9秒98)をマークするまで「誰が勝つのかではなく、誰が9秒台を出すかにフォーカスされていて、それが思ったよりきつかった」と吐露。最初は仕方ないと思っていたというが「9秒台を出すまで、ちゃんとよかったねとゴールしたことはなかったと思います。ずっとため息を聞いていると、ちょっと疲れてきた。でも気持ちをごまかしながらやっていました」と当時を振り返った。
さらに、大学2年時に国が難病指定している潰瘍性大腸炎を発症。「陸上人生終わるのかな、引退かなと覚悟しました」と絶望の淵に立たされたこともあった。その一方で病気と闘う中で「「試合に出ても『このぐらいの結果ならいいか』『代表に入れればノルマ達成かな』という考え方になっていた。それって上を目指す人の考え方じゃない」とモチベーションが低下。さまざまな試練、重圧が次第に桐生を追い詰めていった。
この3か月間はほとんど陸上のことを考えずに過ごした。年内はレースに出場せず、陸上教室などを行う方針。それでも、山縣亮太(30=セイコー)が持つ100メートルの日本記録(9秒95)超えを視野に入れている。「追い風に恵まれたレースでも、記録会でも何でもいいから、あの人の記録を超えたい」。焦る必要はない。自らのペースで後悔のない競技人生を歩んでいく。