エースの「リーダー力」とは――。競泳の日本学生選手権最終日(31日、東京辰巳国際水泳場)、日大4年の池江璃花子(22=ルネサンス)は女子100メートル自由形決勝で54秒26をマークして優勝。初日(28日)の50メートル自由形に続きインカレで自身初の個人2冠に輝いた。大学ラストイヤーは女子主将としてもチームをけん引。そのキャプテンシーを同僚らが証言した。

 今大会は個人2種目で優勝を果たし、リレーも3種目に出場。女子チームは6位で総合優勝を逃したものの、大車輪の活躍を見せた。最後のインカレを終えた池江は「自分は試合で結果を出すことしかできない。今日のレースでチームメートへの恩返しができた。後輩たちにも自分の背中を見せることができた」と振り返った。

 個人の結果がクローズアップされることが多い中、池江は大学対抗で勝敗を争うインカレにも並々ならぬ思いを抱いていた。日大水泳部の関係者は「インカレのような雰囲気が好きなのも大きいと思うが、チームのことを考えて発言できる子。ただ速い子はいくらでもいるけど、チームでこうやっていきたいと意見をちゃんと言えるタイプ」と証言。大会前には女子チーム内でZoomによるミーティングを実施し、積極的にコミュニケーションを図ってきた。

 女子チームだけでなく、総合優勝に輝いた男子にも大きな影響力を発揮した。男子主将の石崎慶祐(4年)は、かつて池江について「一緒にいて楽しいですし、僕は自信がなくて発言できないときがあっても、池江選手は自信を持って発言してくれる。主将になって、よりドシッと構えている感じがするし、池江選手のおかげでチームがいい方向に向かっている」と語っていた。

 その上で「一緒のチームでやったときに、練習中もとにかくストイックだった。練習がきつくて僕が『うわー』となっているところでも、ずっと集中していた。派手なところもありますけど、裏で頑張っているところを見ていると、やっぱりすごい」。常にチームのことを考え、地道に努力を重ねる姿勢が男女問わず、チーム全体に刺激を与えた。

 その池江は「大学4年間、つらいこともあったし、悔しいこともあった。それでも、こうやってチームメートが最後まで応援してくれたり、頑張れたのはこの水泳部だったから。感謝しかないです」。確かな成長を遂げた4年間の経験は、今後の競技人生につなげていく。