ユーチューバー難民が増える!? 米IT大手グーグルが16日、傘下の動画投稿サイト「ユーチューブ」の新規約を発表。昨年末に人気ユーチューバーのローガン・ポール氏(22)が“樹海動画”で大炎上したことを受け、暴力的、差別的な動画には広告が付かないことになった。さらに、ユーチューバーの評価方法を動画の再生回数から、チャンネル登録者数と年間視聴時間に変更する。これをやられて困るのは月に数万~数十万円の“お小遣い”を稼いでいた中堅ユーチューバーたち。無収入になる者も出てきそうだ。

 ここ数年、男子中学生の「なりたい職業ランキング」で上位にノミネートされるユーチューバーだが、現実は甘くない。彼らの主な収入源の一つが企業広告。現行では総再生回数1万回以上の動画に広告が表示される仕組みとなっている。

 だが、注目を集めるために犯罪レベルの迷惑行為を行う者や、差別的な発言を繰り返すヘイト動画が続出。昨年末には米国出身のローガン氏が、ふざけたかぶりもの姿で富士の樹海に入り、偶然発見した自殺者の遺体映像を配信。遺体にケラケラと笑う姿や「おーい! 生きてる?」と話しかけ、ちゃかすシーンに世界中から非難の声が上がり、ユーチューブは同氏との提携を解除した。

 ローガン氏をめぐっては、本紙既報通り、他にも日本で高級ホテルの壁にトマトを投げつけたり、浅草寺の池に水中カメラを突っ込んでみたり。築地で購入した魚とタコを振り回しながら渋谷の雑踏を歩くなど、犯罪レベルの迷惑行為を繰り返していた。

 これらを受け、グーグルは16日、広告掲載ルールの厳格化を発表。暴力や差別的な内容を含む不適切な動画には広告を付けないことを決めた。

 さらに広告掲載基準の根本的な変更もある。これまでは視聴回数1万回に達すると広告を付ける基準を設けていたが、来月20日以降は「登録者数1000人以上」と「過去1年で4000時間の視聴時間」の2つの基準を満たすチャンネルでなければ、広告は付かない仕組みとする。現在、日本のユーチューブには6592のチャンネルがある。そのうち登録者数1000人を超えるものは4417(18日午前時点)。約3分の2が基準を満たすことになるが、難しいのは視聴時間の方だ。

 例えば登録者数1万人のチャンネルで3分間の動画を配信したとする。あまりのつまらなさに皆が最初の10秒間で見るのをやめた場合、10秒×1万人で10万秒=約27時間の視聴時間となる。4000時間には程遠い。

 ネット事情に詳しい関係者は「これまでの視聴回数基準なら、極端な話、再生ボタンを連打していればよかった。それが視聴時間基準となると、クオリティーと固定ファンが求められる。脱落するユーチューバーが続出するでしょう」と語る。

 はじめしゃちょー(24)やHIKAKIN(28)らのトップユーチューバーにとっては、今回の変更は影響はないだろうが、顔面蒼白なのは月に数万~数十万円程度稼いでいた中堅ユーチューバーたちだ。

「再生1回当たりの広告料はここ数年で10分の1ほどに。それまで月に20万円稼いでた人が、数千円になってしまったケースもある。加えて今回の変更で過激動画はNGということになれば、基準視聴時間をクリアできないユーチューバーが続出するかもしれない。この業界も中間層は淘汰され、全体の1%といわれるトップユーチューバーと、趣味で動画をアップする人の二極化が進むと思う」(同)

 学校や会社を辞め、ユーチューバーに転じたものの、生活できなくなってしまう“ユーチューバー難民”は今後増殖するだろう。

 それでもこの道を目指す人はリスクの大きさを肝に銘じなければならない。