第94回米アカデミー賞の発表・授賞式が27日(日本時間28日)、ロサンゼルスで開かれ、濱口竜介監督(43)の「ドライブ・マイ・カー」が国際長編映画賞に輝いた。今後は国際的な活躍が確実視される一方、日本映画界の〝悪しき慣習〟を断ち切る期待もかかっている。

 受賞後の会見で濱口監督は「誰か1人でも深く届く観客がいるんじゃないかと、ただただ信じてやっている。結果的にそれが国を超えて届いたことをうれしく思う」と喜びを語った。

 日本映画の同賞受賞は、2009年の「おくりびと」以来13年ぶりとなる。日本メディアの取材に応じた濱口監督は、映画が米国で受け入れられたことについて「役者さんたちの素晴らしい演技が映っている。肌の色も言葉も違うけれど、傷や弱さを抱える同じ人間なんだということを受け止めてもらったんじゃないか」と話した。

 同作は、日本映画初の受賞が期待された作品賞や、監督賞、脚色賞にもノミネートされた。残念ながら受賞は逃したものの、国際長編映画賞受賞が快挙なのは間違いない。映画会社関係者は「濱口監督はこれから、日本よりも海外で引っ張りダコになるのでは? 何より英語がしゃべれるからね」と指摘する。

 授賞式でも濱口監督は英語と日本語でスピーチ。アカデミー会員らに感謝を述べた後、突然始まったバンド演奏を苦笑いしながら制止し、笑いを誘った。

「濱口監督はとにかく頭がいい。最終学歴が東京藝術大学大学院なのでそのイメージが強いが、その前に東京大学を出ている。英語もペラペラとは言えないが、それなりにしゃべれるので、海外の評価はこれからより高まるだろう」(前同)

 濱口監督は東大卒業後、映画の助監督などを務めていたが、その後東京藝大大学院に入学し直した。「助監督時代に、日本映画界の〝悪しき伝統〟を見て嫌気が差したらしい。撮影現場の劣悪な環境とか、いわゆる〝枕営業〟みたいなものですね。そういう現場を見て、『自分で勉強し直した方がいい』と思って大学院に入り直したんです」(映画関係者)

 最近の日本映画界は、映画監督の榊英雄氏や俳優・木下ほうかによる、女性への性加害が報じられた。

「ああいう問題を濱口監督は一番嫌っている。今回の受賞により、名実ともに日本映画界のトップに立ったワケだから、ああいう悪しき伝統をなくしていくことにも尽力してくれるのでは」(前同)

 米国だけではなく、欧州での評価も高まる一方だ。前出映画会社関係者は「今年2月のベルリン国際映画祭では国際審査員団に選ばれています。さらに昨年、脚本賞を受賞したカンヌ国際映画祭で、今年の審査員を務めるのは『ほぼ確実』と言われている」。

 さらに本人以外にも、こんな期待も寄せられている。

「『ドライブ・マイ・カー』は村上春樹氏の短編が原作。毎年、ノーベル文学賞候補に挙がりながらまだ受賞してない村上氏だが、自身の作品を映画化したものがアカデミー賞で評価されたのだから、今年の受賞に期待が高まってきています」(出版関係者)

〝世界の濱口竜介〟の活躍が、〝世界の村上春樹〟を後押しする!?