【取材の裏側 現場ノート】ソフトバンク宮崎春季キャンプでは毎朝、報道陣に練習スケジュールが書かれたA4サイズのメニュー表が配られる。午前8時過ぎから始まる「アーリーワーク」には野手では期待の若手・井上、水谷の名前が毎日書き込まれてきた。その横には「希望者」と記載されている。

 悩ましげな表情でバットを握る男の姿が浮かんだ。実はここまで人知れず〝アーリーワーク皆勤賞〟の主力がいる。栗原陵矢外野手(25)だ。この春、チーム練習のウオーミングアップ前に汗だくになっている栗原の姿を何度も目にした。「毎日っす。打撃が〝カス〟すぎて。シーズン中にもあるんですけど、構えが…(しっくりこない)」。会話中も右手にバット、左手に荷物を抱えた状態でトップをつくっていた。今キャンプの紅白戦成績は4試合で9打数1安打。時期が時期だけに心配はいらないと思うが、本人だけにしか分からない感覚と焦りがあるように映った。

 昨季はチームで全試合に出場し、東京五輪では日本代表として金メダルを獲得。オフにはテレビの正月特番にも出演し、一気に「全国区」に駆け上がった。巷のイメージは、明るい人柄とファン受けするルックスの良さが先行しているような気がする。

 そんな中で、この春は野球人としての「真の姿」を見せている。真新しい背番号「24」は、昨季まで「打撃職人」と呼ばれた長谷川勇也(37=現一軍打撃コーチ)が背負った番号。栗原は、私生活を含めた野球に向き合う〝姿勢〟を敬って継承した。本人に「誰かを思い出した」と話を向けると「いやいや、全然っすよ!」と照れ笑いを浮かべたが、魂はしっかりと受け継がれている。

 昨秋キャンプでは柳田ら主力不在の中、打ち上げの手締めを務めた。「来シーズンは藤本監督、柳田キャプテン、そして栗原副キャプテンのもと頑張りましょう。勝手ながら副キャプテンに就任させていただきます!」と笑わせたが、藤本監督は「そのつもりでやってくれるとありがたい」と喜んだ。柳田、甲斐とともにレギュラーを確約されている責任感と使命感が、早朝練習へと足を運ばせているはずだ。

 17日の紅白戦では目を引くシーンがあった。7回二死一塁、栗原が放った左中間への鋭い当たりは白組の中堅・佐藤直の好守に阻まれた。ファンの視線と喝采が一斉に佐藤直に向けられる中、柳田は紅組ベンチから飛び出すと、真っ先に栗原に拍手を送り「オッケー、オッケー!」と言葉をかけて笑顔で出迎えた。実はこの打席の直前に、栗原は柳田に悩みを相談していた。「柳田が快く手を差し伸べるのは、日頃のちゃんとした行動を見ているから」(チーム関係者)。柳田に限らず、期待をかける首脳陣も含めてチームから「姿勢」を認められている。

 求心力を高める〝副キャプテン〟。一日も欠かさず「あさイチ特訓」に励む姿に、納得がいった。(ソフトバンク担当・福田孝洋)