「平成の怪物」は死んでしまったのか。9年ぶりに日本球界に復帰したソフトバンク・松坂大輔投手(34)が4日、阪神とのオープン戦(甲子園)で今季の実戦初登板を果たした。2006年6月9日以来、3190日ぶりの聖地で3回を投げて4安打2四球。走者を背負う場面が目立ったが無失点で切り抜け白星を挙げた。全盛期の姿を知るファンには何とも物足りない内容だったが…。ここまでの松坂を、本紙評論家陣はどう見たのか。

「緊張というかフワフワした感じで、うまく力が入らない感じだった。最後のイニングには今の時期にしては力のあるボールがいった。あと2試合か3試合か分かりませんが、打者と対戦していけば自然に上がっていくと思います」

 降板後の松坂はそう振り返り、一定の収穫があったことを口にした。立ち上がりは直球に力強さがなかったが…。3回にはこの日最速の146キロをマークした。

 佐藤投手コーチは「オレ的には物足りないけど、近づいてはいるよ。あとは直球の精度」としたが、工藤監督は「よかったよ。任せておけば大丈夫だよ」。そんな松坂を周囲はどう見たのか。

 西武時代の松坂をよく知る、本紙専属評論家の伊原春樹氏は「松坂とはキャンプで話をしたが、彼のことだから工藤監督や佐藤コーチらと相談しながら、きっちり修正してくるだろう。精神的にもオトナになっているし、投球術にうまさが加わっており、体さえ元気なら10勝はできるのでは」と、走者を出しながら失点を許さなかった松坂の“うまさ”を前向きにとらえた。だが「ファンは過度な期待をするかもしれないが、別に昔の姿を取り戻そうとする必要はないと思う」と、モデルチェンジの必要性にも言及した。

 本紙評論家の得津高宏氏は「今日のピッチングを楽しみにしていましたが、あれだけ真っすぐが抜け、簡単に打たれるとは…。どう見ても全盛期の5~6割ぐらいで、昔のホップするような球は見る影もありませんでした。私を含め、周囲は期待しすぎていたのでは。『松坂大輔は死んだ』と言ったらかわいそうですが、周囲は過去のイメージを捨てたほうがいいし、期待したらかわいそうです」と、ショックを受けたという。それでも「夏場に向けて徐々に仕上がってくるのでは、という思いもあります。今の時期はまだ寒いですし、そこに期待したいですね」とした。

 今年から本紙評論家陣に加わった元阪神の遠山奨志氏は「これが松坂か、と…。タテのスライダーのキレはあったが、真っすぐはまだまだ。ボールに躍動感がなかったし、146キロが出たといっても、オッとは思わなかった。以前のような力強さが見られなかった」との印象を持ったという。その上で「このままでは厳しい1年になるのではないか。ソフトバンクは打線がいいが、その援護があったとしても10勝は計算できない、と言わざるを得ない。もはや全盛期の松坂ではないし、はっきり言って全盛期に戻ることは無理。他球団もこの日の投球を見て、いけると思ったはずだ。“怪物・松坂”はメジャーに置いてきた。今後は“ニュー松坂”にチェンジできるかがポイント。その姿に期待したい」と語った。

 今後について指摘したのは、本紙評論家の前田幸長氏だ。「キャンプのブルペンで見たときから、上半身と下半身のバランスがよくなかった。若いときにできてたことができなくなるのは仕方ないことだし、モデルチェンジというのはそういうもの。今のままのフォームではコントロールがアバウトになってしまうので、10勝っても10負ける。こう投げたらこのコースに行くというのをつかむには、数多く打者を相手に投げるしかないですね。もともと投げ込んでフォームを作るタイプなので、ブルペンと実戦でとにかく投げていくしかないでしょう」

 やはり今の松坂に、かつての輝きを求めるのは酷なのか…。