【ボート記者リレーコラム】ボートレース担当記者が現場でレースを観戦、取材する際、気にしているのが自身の予想、そして自腹で購入した舟券が的中するか、だ。だが実は、もっと気になっていることがある。それは紙面上のコラムやコーナーで取り上げた選手のレース結果だ。舟券に絡んでくれれば何の問題もないが、Fや失格などになると最悪だ。そして先日、記者にとって最悪の出来事が起きてしまった。

 本紙はSGやGⅠなどのビッグレースの際に毎日1人の選手を取り上げてインタビューを行う「直撃!!」というコーナーがある。その大会へ強い意気込みがある選手、地元選手や前年に惜しくも優勝を逃すなど思い入れのある選手、衝撃的なレースをした選手、勝負駆けに挑む選手などを主に取り上げている。レースで活躍することが大前提なので、大崩れしたり、ましてやFを切ったりすると現場での居心地も悪く、何となく選手にも顔を合わせづらい。モヤモヤして仕事が手につかないこともある。読者の皆さんにもこの心境はご理解いただけるだろう。

 実際にはプロの一流レーサーが気にしているはずはなく、「東スポのせいだ!」といった苦情を直接言われたことは“まだ”ない。だが取り上げた選手が続けて凡走したりアクシデントが起きると、同様のコーナーやコラムを担当している他社の記者や関係者などに、いじられることになってしまう。デビューから1年もたたない新米記者にとって、これはつらいことだ。

 そして、事件は起きてしまった。それは石野貴之(大阪)の連覇で幕を閉じた鳴門SGオーシャンカップでのこと。記者は初日2Rで快勝し、2日目メーン12Rに出場する原田幸哉(愛知)を「直撃!!」。6月の地元・蒲郡SGグラチャンで準優当確ながら妨害失格となり、巻き返しとなる直後のSGでの意気込みを聞きたかったからだ。

「今回はやりますよ」と語ってくれた原田だったが、レースでは2周1Mを3番手で回った際に振り込んでしまい、後続の池永太を転覆させてまさかの妨害失格…。的中寸前だった舟券も紙クズになってぼうぜんとしていたところ、さっそく他社の記者から「やっちゃいましたね」「やっぱり東スポがデスノートだ」などと言われるトリプルショックに見舞われた。初日に取り上げた石野が⑤⑥発進となった際には疑惑レベルだったのが、記者が“元凶”だと認定されてしまったのだ。

 もっとも、その石野が連覇を達成し、3日目に取り上げた菊地孝平(静岡)が予選をクリアしたことで“デスノート”ではないことは証明したハズだが…。

 今後も大レースを取材する際にはこの“闘い”が待っている。読者の皆さんも「直撃!!」で取り上げた選手に何かアクシデントがあったときは、記者の心中を察して、ニヤッと笑っていただければ幸いです。