目指せ!「ヤングダービー」U-30の咆哮

【野中一平(20=愛知・111期)】昨秋、愛知から2人の“ビッグネーム”がプロデビューを果たし、話題を呼んでいる。その名も「野中」と「彦坂」。昭和の一時代を築いた“伝説の男”と同姓とあって、多くのファンに親しみをもって見守られている。今回クローズアップするのは野中一平(20)。デビュー半年で、未勝利ではあるが、原田幸哉ら同県のSGウイナーも認めているスタート力は新人離れした天性のものが見え隠れする。次代の愛知支部を担う逸材の「将来性」を各方面から“検証”した。

 モンスターの再来――。デビュー半年で水神祭も未経験の身とあって、そう呼ぶには気が早いが、それでも結果に表れないレースセンスと度胸は選手間でも評判だ。

 とにかくスタートが早く、ブレがない。師匠である後藤陽介の指導方針を聞けば、それも納得できよう。

「ターンのバランスとスタート力はすでに一級品です。だから技術的なものは特に教えることはありません。今は結果にこだわることなく思い切ってやれ。走りだけでなく、一人の人間として謙虚な姿勢は忘れるな、とだけ言っています。必ず強くなる。約束します」

 115期卒業チャンプでもあり、その資質は誰もが認めるところ。恐るべき点はそのスタート力だ。デビュー期の平均STがコンマ14。

 多くのSG戦士に交じって一握りの上位に名を連ねている。

「スタートはしっかり行けていると思うけど、その先は自分のミスで着を落とすことも多いし、自分の実力を出し切れていないのが悔しい。ただ結果が出ないことにまだ焦りはありません。桐生順平さんのような選手になりたい」

 スリットで優位な態勢を築くことは多くても、一瞬の判断で立ち遅れ、勝ち切れないレースも多いが、それは誰もが通る道。デビュー期の平均STが憧れの存在である桐生とすでに同じ数字をマークしているのは胸を張れるものだ。

 師匠と初の同時あっせんとなった蒲郡のGW戦では驚くべき数字を残した。原田幸哉、柳沢一ら愛知が誇る超速攻派を抑え、節間の平均STはコンマ07で全選手中トップ。怪物の面影がチラホラと垣間見える。

 実力面だけでなく、その明るいキャラはすでに多くの先輩にイジられ、気に掛けてもらえる存在となりつつある。新人とあってレース後に多くの先輩からお小言をもらうことも多いが「反省はしてもへこむ必要はない」との師匠の教えを守り、次への活力に転化できているのは強み。

 目先の白星よりも、着実な地力アップを念頭に置き、将来的なビジョンもはっきりしている。

「ひとつずつできることから積み重ねて、プレッシャーをプラスに変えて大きな舞台で活躍したい。いずれはSGを勝てる選手になりたい」

 愛知速攻派の系譜を継ぐ大物ルーキーが、ヤングダービーで頭角を現す日もそう遠くはない。

☆のなか・いっぺい=1994年10月17日生まれ。岐阜県出身。2014年11月、とこなめでデビューを果たし7節を消化。まだ白星はない(19日現在)。115期やまと学校の卒業記念チャンピオン。師匠は後藤陽介。身長160センチ。血液型=A。