卓球強すぎて中国自体が困っている

2016年08月14日 06時00分

卓球シングルスは男女とも中国勢が金銀を総なめ(ロイター)

 リオ五輪卓球のシングルス決勝は男女ともに中国代表同士の激突で、金銀を独占するハイレベルな内容だった。中国の五輪代表たちが幾度となく口にしてきた「祖国争光」とは「国際社会で中国に威光を放たせる」という意味だが、様々な面で事情が複雑化してきているようだ。

 

 中国事情に詳しいノンフィクションライターのせりしゅんや氏は「これまで政治がこじれたタイミングで日本のスポーツ選手が中国に行けば、確かに敵意をあらわにされたが、そこには感情が少なく思えました。そもそも、中国政治における反日感情は歴史や領土の未解決問題よりも、多民族の爆発した人口を制御することや、自分たちが発展するために手頃な宿敵であることが先にあった」と語る。

 

 今回の五輪でも、男子体操で自分たちを抜き返した日本の内村航平(27=コナミスポーツ)には感服した声も中国ネット上で多かった。国民に最も人気を博すバドミントンでも、自分たちを脅かす日本人選手の姿勢に「手本」として見習う報じ方が見られる。

 

「そもそもスポーツにおける中国は明確に日本を超えた国で、さすがにやっかみは必要ない。むしろアジアの独壇場となった競技で“敵視しやすい相手”である日本が台頭していることはありがたいようです」とせり氏。

 

 それが何より顕著に出た例が卓球だ。周知の通り、卓球は中国代表と中国代表から漏れて国籍を移した他国の代表がメダルを争っている。各国の女子代表には元中国籍の選手が多い。日本はほぼ“純国産”の選手でチームを構成した世界的にもまれな強豪国だ。せり氏は「強くなりすぎてマンネリ化した中国に刺激を与えるだけではなく、中華系以外の選手が活躍することで、五輪種目としての存在意義が守られやすくなる。ただし、中国国民が心底で日本を応援しているのかという点は変わってきています。北京や上海などの世界有数の経済都市では共産主義が著しく薄れ、個人の商売ばかりに気を取られ、スポーツ観戦における愛国心自体が薄れている」と指摘する。中国の変貌は五輪競技の面でもデリケートな過渡期に来ているようだ。