大相撲でざわめきが収まらない。貴乃花親方(45=元横綱)が7日夜、テレビ朝日系「独占緊急特報!! 貴乃花親方すべてを語る」に出演。日本相撲協会の理事候補選挙(2日)での惨敗や、元横綱日馬富士(33)による弟子の貴ノ岩(27)への傷害事件などについて心境を明かした。お茶の間は渦中にいる「平成の大横綱」の激白にクギ付けとなったが、今回のテレビ収録は相撲協会の了承を得ておらず、事実上の“無断出演”だったことが判明。角界内で大きな波紋が広がっている。

 今回放送された緊急特番はインタビュー形式で収録。2日の日本相撲協会の理事候補選挙(定員10人、立候補11人)で獲得2票で惨敗したことについては「すっきりしています。やるだけやった。私が出ていなかったら10人(無投票)で収まっていた。“1票でもいく(出馬する)”と言ったことを体現するだけ」と落選覚悟で立候補した意義を強調した。

 昨年の秋巡業中に日馬富士が弟子の貴ノ岩に暴行を加えた事件にも言及した。貴乃花親方は巡業部長の立場にありながら相撲協会へ報告せず、独断で警察に被害届を提出。その後は協会による貴ノ岩への聞き取り調査の要請を再三にわたって拒否した。貴乃花親方は番組の中で、貴ノ岩が重傷のため調査に応じられないことなど、約20通の意見書を協会へ提出していたことを明かした。

 その上で「被害者の貴ノ岩は何ら弁明すら機会を与えられていない。公平性に欠けているところに協会に対して強い疑問を抱いている。(協会の調査への)拒否ではなく報告書なり回答書なりで毎回、お返ししている」と相撲協会に対しての反論や不信感を口にした。インタビュアーの山本晋也監督(78)から「(相撲協会から)被害届を取り下げる要請があったのですか?」と強く質問されると「そうですね。そういうことです」とも認めた。さらに「そこに同席した力士が土俵に上がるのは神事に反する」と暴行現場に居合わせた横綱白鵬(32=宮城野)らを痛烈に批判する場面もあった。

 貴乃花親方と相撲協会の主張が食い違っている点について、現時点では全てを検証することはできない。立場が異なれば、見方も大きく異なってくるからだ。

 ただ、これまでメディアの前で沈黙を貫いてきた貴乃花親方が突如、テレビ番組を通じて自らの主張を始めたタイミングには不可解な部分も残る。親方衆の一人は「なぜ今ごろになって協会を批判するのか。選挙に落ちてから言っても意味がない」と首をかしげた。

 一方で、今回の収録は相撲協会の了承を得ておらず、事実上の“無断出演”だったことが分かり、角界内では大きな波紋を広げている。テレビ局が番組を放送する際には、相撲協会へ事前に内容を申請して許可を得る必要があるからだ。

 別の親方からは「(無断出演は)普通の会社ならクビになってもおかしくない。これでは協会の“示し”がつかない。処分するべき」との強硬論まで出ている。

 貴乃花親方は日馬富士の暴行問題への一連の対応をめぐって理事を解任され、役員待遇委員へ降格されたばかり。今回の理事候補選の落選を受けて、3月には役員待遇からも外されることが見込まれている。今回の“無断出演”の一件を受けて、さらなる処分もあり得る雲行きだ。貴乃花親方は今回のインタビューの中で、今後も相撲協会に対して「戦います」と宣言した。選挙戦が終了しても、角界内の混乱はまだまだ続きそうだ。