人気横綱を取り巻く“空気”に微妙な変化が見え始めた。大相撲の横綱審議委員会が24日、東京・両国国技館で開かれ、名古屋場所で2場所連続途中休場となった横綱稀勢の里(31=田子ノ浦)に万全の状態で復帰することを勧告。通算勝利の新記録を達成した横綱白鵬(32=宮城野)が特別表彰されることになったのとは対照的に、横審内の見方は厳しさを増している。

 横審の北村正任委員長(毎日新聞名誉顧問)は大記録を達成した白鵬を「この記録は誰にも破れない。大変な偉業」と絶賛。史上2位の63連勝をマークした2010年に続く特別表彰を決めた。

 一方で、稀勢の里に対しては厳しい声も出始めた。5月場所は左上腕と左胸のケガで途中休場。今場所は新たに左足首まで痛め、2場所連続の途中休場となった。横審では前回の5月場所後の会合で一部委員から名古屋場所を休場して体調回復を優先すべきとの意見が出ていた。

 今回の途中休場は、横審の不安が的中した格好。北村委員長は「秋場所までに体調を整えることが望ましいが、どうしても万全でない場合は休んだほうがいい。そういう意見が前回以上に強く出た。横審の大多数の意見」と休場勧告ともとれる発言をした。

 続けて「客観的に自分と周りの状況を見る。そのなかで横綱として出て全うできるのか。その判断が甘かった。白鵬はケガの対応の仕方、自己管理ができている」と和製横綱に“物言い”をつけた。現時点で横審として「激励」や「注意」などを行う動きはない。ただ、稀勢の里への称賛が相次いだ1月場所や3月場所のころに比べて横審内のムードが変わりつつあることは確かだ。

 同じく2場所連続休場となった横綱鶴竜(31=井筒)に対しても、各委員から苦言や厳しい意見が出た。都倉俊一委員(作曲家)は「次に出る場所が勝負。(途中休場や成績不振なら)進退問題が関わってくる」。完全復活を遂げた白鵬とは対照的に、休場組の両横綱は逆風にさらされている。