大相撲名古屋場所2日目(10日、愛知県体育館)、新大関の高安(27=田子ノ浦)が幕内勢(30=伊勢ノ海)を一気に寄り切って初白星。大関として初勝利を挙げた。兄弟子の横綱稀勢の里(31)と同じ中卒の叩き上げ。角界でも屈指の稽古量で看板力士に上り詰めるなど多くの共通点がある一方で、そのキャラは兄弟子とは正反対。自由奔放でマイペースな男が、平成以降3人目の新大関Vを目指す。

 大関として初勝利を挙げた高安は「(立ち合いは)踏み込めた。昨日は中途半端になったので、今日はハッキリとした相撲を心がけた」と納得の様子。「ここから、徐々にペースを上げていきたい。(初日の黒星は)体調が悪かったわけじゃない。気持ちだけだと思う。今日はしっかり勝ったので、前向きにいきたい」と自ら目標に掲げている初優勝へ向けて表情を引き締めた。

 兄弟子の稀勢の里と同じく、中学卒業と同時に入門。豊富な稽古量と恵まれた体で角界の看板力士に上り詰めるなど、共通点は多い。一方で、そのキャラは兄弟子とは正反対だ。稀勢の里は基本的に土俵外での露出には消極的。実際、横綱昇進時にはテレビ出演のオファーをほとんど断っている。これに対して、高安は何のためらいもなく各局の番組に相次いで出演。「(相撲以外の部分で)いろいろと勉強になる」と目を輝かせた。

 また、6月にはボートレース江戸川で開かれたイベントに参加。「お嬢様レーサー」として知られる富樫麗加(27=東京)をお姫さま抱っこして周囲を驚かせた。厳格な指導で知られた先代師匠(元横綱隆の里)の時代を知るベテラン親方の一人は「アレを見たときにはビックリした。以前なら考えられない」と思わず眉をひそめたほどだ。

 さらに、今場所前に行われた二所ノ関一門の連合稽古を堂々と欠席。当の高安は「体が張っていた。あまり無理をすることはないと思って。周りに合わせる必要はない」と悪びれる様子もなく言ってのけた。普通の感覚なら一門の親方衆や関取衆が顔を揃える稽古があれば、参加する義務感を少なからず抱くもの。大関の地位となればなおさらだが…。高安はいたってマイペースだった。

 先代の教えを忠実に守る稀勢の里とは一線を画する高安は、まさに新世代の大関。もちろん、自由奔放に見える行動も土俵でしっかり結果を残してこそ周囲から認められる。このことは高安自身も自覚しているだろう。大関としての初白星にも「ホッとした気持ち? ないですね。千秋楽が終わるまでホッとできない」ときっぱり言い切った。

 まだ場所は始まったばかり。平成以降では2人しかいない新大関Vを果たすためにも、このまま1敗キープで白星を重ねていきたいところだ。